優勝会見で見た美しい涙…明大・牛島「楽しかった思い出はない」

[ 2016年5月30日 10:10 ]

<東京六大学 明大・立大>優勝を決め、喜ぶ牛島(左)と柳

 今春の東京六大学野球リーグ戦は明大が3季ぶり38度目の優勝を飾り、早慶3回戦を残すのみとなった。明大は全カードが3回戦以上に突入。計16試合をこなすハードなシーズンの中で、タフさが際立った。

 5月23日、明大が立大を下して優勝を決めた後に行われた会見。そこで美しい涙を見た。会見場には井上崇通部長、善波達也監督を始め、エースで主将の柳裕也(4年、横浜)、副将の吉田大成(4年、佼成学園)、捕手の牛島将太(4年、門司学園)、代打で決勝打を放った宮崎新(3年、履正社)が出席した。当然、エースで主将という二重の責任を負いながら1089球を投げ抜いて6勝を挙げた柳や吉田は晴れやかな笑顔で、また宮崎は緊張気味に受け答えする中で、女房役の牛島だけはなんだか雰囲気が違った。「リーグ戦が始まってからずっと辛かったです。楽しかった思い出はない」。

 昨年までの正捕手は坂本(現阪神)。3年間マスクをかぶり、名実ともに大黒柱だった。坂本が卒業し、チームとしても大きなターニングポイントとなった今年。牛島は門司学園時代に甲子園出場はなく、経験値も未知数。そんな中で坂本の後継を務める重圧はいかばかりだったかと胸が痛くなった。私はふと思い立って、相棒の柳に質問を振った。「柳君から牛島君へ何かかけたい言葉はありますか?」。

 すると柳は言った。「投げるたびに呼吸が合ってワンバウンドも止めてくれた。今、部屋が一緒なんですけど、相手の映像を見て一生懸命メモしたりしている姿を見ていたので、神宮でも信頼して投げられた。頼もしかったです」。柳が発言している最中、牛島の表情を横目で見ていたら、みるみる目が赤くなり、頬を涙がつたった。

 止まらない涙が、耐えてきたプレッシャーの大きさを物語っていた。善波達也監督はそんな牛島を見て「そんなに小言を言ったかなあ」と苦笑いしながら「牛島の成長が、ここに来るには必要だった」と目を細めた。「8割くらいはリードのこと考えてましたから。打席に入る時だけは純粋に楽しかった」と牛島。純粋に楽しんだ打撃では5本塁打を放った。主力の多くが卒業しても優勝する明大の底力の一因を見た気がした。

 6月6日からは全日本大学選手権に臨む。鉄腕の大黒柱を支える女房役にも注目だ。(記者コラム・松井 いつき)

続きを表示

2016年5月30日のニュース