由伸監督 木村拓也さん墓前にV奪回誓った「全力で戦います」

[ 2016年5月24日 05:47 ]

元チームメイトの故木村拓也さんの墓参に訪れ手を合わせる高橋監督

 タクさん、勝ちます――。巨人・高橋由伸監督(41)が23日、広島市内で2010年4月に亡くなった元同僚の木村拓也さん(享年37、当時巨人内野守備走塁コーチ)の墓参りをし、監督就任報告とV奪回を誓った。24日からは敵地で0・5ゲーム差で追う広島との首位攻防3連戦。04年のアテネ五輪日本代表、そして巨人で一緒にプレーした戦友へ、必勝を誓った。

 朝もやがまだ眼下の広島市街を覆っていた。小高い山の中腹。静寂に包まれた霊園の中を、高橋監督は供花を手に歩を進めた。木村さんの眠る墓。丁寧に花を供えた後、腰を折り、静かに手を合わせた。

 「タクさん、監督になりました。信じられますか?」

 10年4月2日。当時コーチだった木村さんはマツダスタジアムでの試合前のシートノック中にくも膜下出血で倒れた。そして5日後に亡くなった。6年が過ぎた。今年4月1日から広島で3連戦を戦ったが、デーゲームが重なったため行けなかった。ようやく足を運ぶことができた今回、自身の監督就任に加えて、チームの現状を報告した。

 「あすから、また気持ちを新たに全力で戦っていきます」

 ハッスルプレーが身上だった木村さんの現役時代を思い起こすように、「全力」という言葉に思いを込めた。

 3歳年上の故人が広島時代の04年アテネ五輪で、日の丸をつけてともに戦った。2年後の06年からは巨人で4年間一緒に戦った。木村さんの両親とも交流があり、今年2月の宮崎キャンプに、木村さんの父・茂夫さん(67)が表敬訪問。その際に「タクさんに“まだ監督は早い”と思われていそうです」と言うと、「いや、拓也は天国で喜んでいますよ」と返された。この日墓前で口にした「信じられますか?」のひと言には、高橋監督がめったに明かさない40歳の若さで監督に就任した本音が垣間見えた。

 広島OBでもある木村さんの墓前で、交流戦前の大事な首位攻防戦への意欲を強くした。「まずは、この3つをしっかり戦いたいね」。前日、中日に敗れて、広島に奪われた首位の座を取り返す3連戦。不振の4番・ギャレットに2軍調整を命じるなど模索しながらの戦いが続くが、木村さんの前でぶざまな戦いはするわけにはいかない。

 合わせた手をほどき、立ち上がった高橋監督は木村さんの墓を背にし、広島の街を一望した。そして再び、墓に視線を落とした。

 「また、いい報告をしに来ます」

 最終目標のV奪回を手にしての再会を誓った。(春川 英樹)

続きを表示

2016年5月24日のニュース