鳥谷、失敗を引きずらない強さ 「また明日」こそプロの姿勢

[ 2016年5月19日 08:30 ]

<神・中>4回1死満塁、鳥谷が勝ち越しの左犠飛を放つ

セ・リーグ 阪神3-2中日

(5月18日 甲子園)
 阪神・鳥谷敬が前夜、ロッカールームへ引き揚げる直前に漏らした「また明日、がんばります」を覚えている。歩きながら前を見て独り言のように、自分に言い聞かせるように、つぶやいた。

 敗戦につながる痛恨の落球を犯した試合後である。何でもない「また明日」こそ毎日試合があるプロ野球選手が持つべき姿勢なのだろう。

 鳥谷は<僕だって打てなかったり、エラーしたりしたときは悔しいし、バツが悪い思いをする>と自著『キャプテンシー』(角川新書)で明かしている。<けれども失敗やミスを引きずってもいいことはないし、実際に引きずることはない>。そのためには「準備する」と練習に取り組む。<それが僕の切り替え方法といえる>。

 だから、この日も日課のように、早く球場入りし練習を繰り返した。特別なことをするわけではない。しかし、毎日やれることをやる。この大いなる継続が力となる。

 試合では勝ち越し決勝の犠飛を放った。同点とされた直後の4回裏、1死満塁。1ボール―1ストライクから中日・山井大介の外角シュートを左翼後方に打ち上げた。

 「最低限の仕事はできました」と試合中のコメントにあった。あの場面、最悪は内野ゴロ併殺打である。山井得意のシュートを引っ掛けては凡ゴロが転がり、相手の術中にはまる。ならば最もゴロを避ける打撃を心がけるべきで、それは取りも直さず、反対側(左打者なら左翼方向)に外飛を打ち上げる打撃となる。満塁で押し出し死球もある。外角に狙いを定めていたのかもしれない。

 鳥谷はこの打撃が一つの持ち味である。犠飛はセ・リーグ単独最多となる今季5本目。自身がリーグ最多犠飛を記録した2012年が8本だったことを思うと、量産ぶりが分かる。シーズン143試合に換算すれば、実に16本。シーズン最多犠飛のプロ野球記録15本(1970年・大杉勝男=当時東映)を破るペースである。

 鳥谷は持ち味を出し、勝利に貢献したのである。前夜の悪夢は過去の出来事でしかない。

 1986年のワールドシリーズで「世紀のトンネル」を犯したビル・バックナーが語った言葉を思い出す。「つらい経験ほど、あとで何かを生む力を秘めている」。

 淡々と仕事をこなした鳥谷の精神力を思う。これがプロである。(内田雅也スポニチ本紙編集委員)

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