10日待望の復帰 ヤンキース169キロ左腕、母国キューバへの思い

[ 2016年5月8日 09:15 ]

ヤンキースのアロルディス・チャプマン投手

 レイズがキューバの首都ハバナで同国代表と親善試合を行った3月22日。フロリダ海峡を越えた先にある米フロリダ州タンパのクラブハウスでテレビ画面を注視する男がいた。今季からヤンキースでプレーする最速105マイル(約169キロ)左腕チャプマンだ。

 昨年、54年ぶりに米国とキューバの国交が回復。99年にオリオールズが同国代表と親善試合を行って以来、大リーグ球団がキューバ国内で試合を行うのはこの試合が17年ぶりだった。約5万5000人が集まった一戦には米国のオバマ大統領とキューバのカストロ国家評議会議長も並んで試合観戦。歴史的な一日となった。試合はレイズが4―1で勝利したが「キューバの選手にとってはレイズと対戦できて本当にいい機会になったと思う」とチャプマン。自身のロッカーの椅子をテレビの方向へ向きを変えて座り、試合に見入っている姿が印象的だった。

 チャプマンは09年の第2回WBC出場後、亡命。翌10年にレッズと契約を交わした。現在は両国の国交は回復されたものの、キューバ選手が大リーグでプレーするには依然としてリスクを冒して亡命する方法しかない。左腕が望むのは、危険を冒すことなく大リーグでプレーできる環境の整備。「彼らが米国にたどり着くのに命の危険を冒す必要はない。もし将来的に彼らがその機会を得られれば、それは素晴らしいこと。彼らだけでなく、彼らの家族にとってもね」。4月29日には米国市民権を取得したことを公表したが、現在も家族をキューバ国内に残す左腕の切実な願いだった。

 昨年12月、恋人と口論になり駐車場に銃弾を発砲、首を絞めたなどの騒動が発覚。ドメスティックバイオレンス(DV)の規範に違反したとして、大リーグ機構から開幕からの出場停止処分を受けていたが、9日(日本時間10日)のロイヤルズ戦からメジャー復帰が可能となる。ベタンセス、ミラーの強力ブルペン陣にチャプマンが加われば、田中ら先発陣にとっては強力な援軍となる。実際にキャンプ中にチャプマンのブルペンでの投球を捕手の真後ろから見たが、昨季平均球速100マイル(約161キロ)を記録した剛球に興奮を隠せなかった。投打の歯車がかみ合わず、最下位に低迷するヤンキース。「キューバン・ミサイル」の異名を持つ剛腕の復帰が、チーム復調のきっかけとなるか。(記者コラム・東尾 洋樹)

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