新井2000安打までの道のり 巡り巡って古巣で、神宮で達成

[ 2016年5月3日 08:00 ]

4月26日のヤクルト戦で2000安打を達成した新井

 4月26日、神宮球場で行われたヤクルト対広島。大記録まであと1安打と迫っていた新井貴浩(広島)は3回裏、ヤクルト先発・成瀬善久から二塁打を放ち、通算2000安打を達成した。

 奇しくも駒澤大学時代にプレーした神宮球場での偉業達成に、何か運命を感じずにはいられない。ここまで18年間のプロ野球生活を送っている新井だが、2000安打達成に至るには様々な歴史があった。

◎ドラフト下位指名からチームの中心選手に

 新井は1998年秋、ドラフト6位で地元・広島から指名を受けて入団。大学4年時には大学全日本代表に選出されるが、決してスタープレーヤーという存在ではなかった。

 プロ1年目のシーズン途中にはファーストでスタメン出場を果たすなど出場機会を得て、7本塁打をマーク。2000年のシーズン途中にチームのベテランであり、大学の先輩でもある野村謙二郎の故障によりサードのポジションを奪取。16本塁打と前年よりも本塁打数が増え、主砲候補として頭角を現していく。

 2001年は7番・サードで初の開幕戦スタメンをつかんだ。また、チーム事情で外野手(主にライト)でもプレーしたことにより、出場試合数を前年の92試合から124試合に増やし、18本塁打を記録した。そして2002年には140試合フル出場を果たすと、打率.287、28本塁打、75打点と自己最多の結果を出す。この年はオールスターゲームに初めて選出されており、飛躍の年だったと言える。

 その一方でチームの中心選手・金本知憲の弟分として、イタズラの標的にされるなど「いじられキャラ」としても認識されていった。オフにはその金本がFA宣言し阪神へ移籍したことで、次期4番打者として期待された。しかし、そのプレッシャーに苦しみ、成績は急下降。さらにグレッグ・ラロッカの加入や、嶋重宣、栗原健太の台頭も重なり、2004年は103試合出場と出場機会も大幅に減ってしまった。

◎初のタイトル、涙のFA宣言……

 2005年、新井に転機が訪れる。打撃スタイルの変更が功を奏して本塁打を量産。4番にも返り咲き、43本塁打で初めて本塁打王のタイトルを獲得した。ちなみに、2005年のシーズン前に初めて護摩行に挑んでいる。この成功体験や縁起のよさもあって、今年まで12年連続で行っているのだろう。チームの主砲として確固たる地位を築き、2006年からは2年連続全試合出場、100打点を達成している。

 そして2007年オフ、FA権を取得していた新井は広島残留か、FA行使かと揺れ動く。悩み抜いた結果、新井はFA権行使を決断。その会見では「辛いです。カープが好きだから」と複雑な心境を語り、涙を流した。

 阪神へ移籍した2008年、新井は北京五輪代表に選ばれ、星野仙一日本代表監督から4番を任された。腰の骨折を押しながら出場し続けたが、チームはメダル獲得を逃し、新井にも非難の声が向けられた。

 五輪でのケガもあり、阪神移籍1年目は不本意なシーズンに終わる。しかし2010年4月途中からは兄貴分・金本に代わって4番に座り、打率.311、19本塁打、112打点と、阪神移籍後の最高成績を残す。さらに翌2011年には93打点で打点王を獲得。今度は「阪神の顔」としてチームを引っ張っていった。

◎自由契約、広島への復帰、そして金字塔を打ち立てる

 順調に結果を出してきた新井。しかし、次第にその輝きは色褪せていく。2012年にはスランプに陥り、本塁打数はわずか9本に。翌年には4番の座をマット・マートンに明け渡し、チームが日本シリーズに出場した2014年はマウロ・ゴメスの入団や、自身の成績不振もあって6年ぶりに100試合未満の出場に終わる。オフには自ら自由契約選手となり阪神を離れ、獲得を打診してきた古巣・広島に復帰することとなる。

 年俸は2000万円(推定)と大幅減となり、広島ファンも「今さら戻ってくるなんて……」と冷たい視線を送る逆境の中で迎えた2015年シーズン。当初は主に代打での出場が多かったが、ブラッド・エルドレッド、ヘスス・グスマンの両外国人の離脱もあって、途中から4番での出場機会が増えた。勝負強い打撃で4番の仕事を果たし、徐々にファンの信頼を勝ち取っていく。

 オールスターゲームにも2年ぶりに出場し、終わってみれば125試合に出場、チームトップの打率.275を記録する存在感を発揮。オフの契約更改では3倍の6000万円(推定)と大幅アップを勝ち取った。

 そして、背番号を28から慣れ親しんだ25に変えた今シーズン。開幕前に残り29本としていた2000安打を順調に達成した。この大記録の勢いが打撃陣に乗り移り、5月1日の試合終了時の打撃10傑に広島から4人(エルドレッド、菊池涼介、丸佳浩、新井)が食い込み、チーム打率.283は12球団トップの成績だ。投手陣との噛み合わせが悪く、勝ち切れない試合があったものの、4月29日からの中日戦3連勝でセ・リーグ首位に浮上した。

 鯉のぼりの季節に首位まで昇ってきた広島。このいい雰囲気を作っている39歳のベテラン・新井貴浩は広島にとってやはり必要不可欠な選手だ。(『週刊野球太郎』編集部)

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