安達 難病乗り越えV適時打「今、野球ができて本当にうれしい」

[ 2016年5月2日 05:33 ]

<オ・楽>8回2死満塁、安達が中前適時打を放ちガッツポーズ

セ・リーグ 広島10-7中日

(5月1日 マツダ)
 復帰後、初めてお立ち台に乗ったオリックス・安達の胸には込み上げるものがあった。「ここにいられるだけでうれしい。野球ができるか分からなくて、今、野球ができて本当にうれしい」。決勝打のヒーローには万雷の拍手が降り注いだ。同点の8回、2死満塁。青山のスライダーを中前にはじき返すと、一塁上で右こぶしを握りしめた。2点適時打で勝負あり。チームも、T―岡田も、そして自らも救う一打だった。

 「体力的にも辛かった。延長なら相当きつかったと思う」。1月に難病の潰瘍性大腸炎を発症して緊急入院。宮崎キャンプを回避するなど長期離脱し、1軍復帰したのは4月12日だ。いつしか「病人」という肩書きは取れたが、体調は万全ではなく、薬やストレスの影響で首周りの発疹は今でも消えない。それでも、15日の西武戦以外はフルイニング出場。延長を阻止する一打は、自らの体にも大きかった。

 さらに同い年で親友のT―岡田も救った。6回の今季1号ソロ弾でヒーローになるはずが、8回にT―岡田の失策が起点となり同点。敗れていれば、眠れぬ夜を過ごしただろう。実は、開幕戦の開幕遠征に向かう直前の3月21日、安達は自宅にT―岡田や西野らを招いて食事会を開いた。自らは開幕に間に合わないため「激励」したが、不調のT―岡田はわずか8試合で2軍降格。苦しむ姿を2軍で見ていただけに、共に喜びたいという一心だった。

 前日のミーティングで「きょうは(打順が)奇数の選手が頑張れ」と、2番安達と、4番T―岡田を無視する冗談でハッパを掛けた福良監督だが、この日は「いいところで打った」と手放しで喜んだ。4月12日の復帰戦ではスタンドで奈緒夫人が泣いていたが、この日は感極まるファンも多かった。チームにもカード勝ち越しをもたらし、安達は男になった。(鶴崎 唯史)

 ▽潰瘍性大腸炎 厚生労働相が特定疾患に指定している病気で、下痢や腹痛などに悩まされる難病の一つとされている。安倍晋三首相は07年にこの疾患が原因で体調を崩し、首相を辞任している。

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