高校で届かなかった聖地 巨人・田口、プロ初完投で甲子園初白星

[ 2016年4月28日 05:32 ]

<神・巨>プロ初完投勝利を挙げ、坂本(右端)らに祝福される田口(左端)

セ・リーグ 巨人11―1阪神

(4月27日 甲子園)
 憧れの甲子園、憧れのマウンドを1人で守り切った。巨人の田口麗斗投手(20)は27日、阪神戦で今季初勝利をマ―クした。7安打を浴びながら5併殺打を奪い、1失点。99球の省エネ投球は、プロ3年目での初完投となった。打線も坂本勇人内野手(27)が2打席連続アーチを放つなど、11点を奪って左腕を援護。首位を走るチームは3連勝を飾り、貯金を今季最多の7とした。

 大きく息を吐き、小さくつぶやいた。「よっしゃ」。9回2死、田口の99球目。選んだのはスライダーだった。最後の打者を一ゴロに抑え、今季初勝利がプロ初完投。ナインから手荒な祝福を受けた20歳は人懐こい笑みを広げた。

 「昨年から長いイニングを投げたいと思ってきた。ホッとしています。ここからがスタート」

 立ち上がりからスライダーを多投した。初回は全て決め球に選択して3者凡退。4回まで無安打投球を繰り広げた。大きく縦に落ちる球は田口の代名詞だ。全99球のうち約半分の46球も投じてバットの芯を外した。9回は先頭打者に左前打を浴びたが、続く横田をスライダーで二ゴロ併殺に料理。「変化球が低めに決まった」。直球の最速は138キロながら、5つの併殺打を奪ってピンチの芽を摘んだ。

 1失点完投し、今季5戦目でようやくつかんだ勝利。球団生え抜きの高卒左腕による完投勝利は97年8月17日横浜戦(東京ドーム)の岡島秀樹以来19年ぶりだ。自身最長だった7回の壁を乗り越えて「やっと勝てて良かった。どんどん勝ちを増やしていきたい」と喜んだ。

 「東の松井、西の田口」――。広島新庄時代からスライダーは一級品で桐光学園・松井裕(現楽天)と比較された。それでも手が届かなかった場所が甲子園だった。3年夏の広島大会決勝では延長15回を無失点完投も引き分け再試合。翌日も1失点完投だったが、援護がなく敗れ泣きじゃくった。昨年4月18日には甲子園での初登板で黒星を喫しており、念願だった聖地での白星。「一番憧れていた場所。そこで勝てたのがうれしい」とはにかんだ。

 菅野以外の先発投手になかなか勝ち星が付かなかった4月だが、24日の今村から高木、田口で3連勝し、貯金は今季最多の7となった。高橋監督は「守備に助けられたところもあるけど、9回投げきったのは自信になったと思う」と称えた。田口は言った。「菅野さんのような最後まで任されるような投手になりたい」。高卒3年目の左腕は無限の可能性を秘めている。(神田 佑)

 ☆田口の13年夏の広島大会決勝 7月28日に瀬戸内と対戦。山岡(現東京ガス)との好投手対決は、0―0で延長15回引き分け再試合。田口が213球、13安打19奪三振に対し、山岡は163球を投げ、わずか1安打、15奪三振の熱戦を演じた。30日の再試合も両投手ともに7回まで一歩も引かず、再び投手戦に。しかし、8回に瀬戸内・大町に右前適時打を許し、田口は23イニング目で初失点。8回を86球、5安打で完投したが、0―1で敗れ甲子園出場を逃した。

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