オリックスの長い一日 適応テストに“合格”した塚田が支配下登録に

[ 2016年4月26日 08:55 ]

1月、オリックス新人合同自主トレで強化練習のダッシュをこなす塚田

 4月15日は、オリックスにとっても担当記者にとっても長い一日だった。午後6時開催の西武戦を前に、午前10時半からウエスタン・リーグ、阪神戦が同じ京セラドームで開催された。2軍のウオーミングアップが同7時40分から始まり、1軍選手が帰宅する午後11時半過ぎまで一昼夜、野球を堪能できた。

 私も朝から2軍を取材。というのも白鴎大から入団した育成選手の塚田が支配下選手登録されるとの情報が入ってきたからで、生で見られるチャンスだった。しかもその日の先発投手。福良監督はじめ1軍コーチ陣や球団首脳陣も大勢視察に訪れる中、緊張するなという方が無理な話。案の定、初回から大乱調だった。

 先頭の上本に四球を与え1死二塁から3番ペレスにはストレートの四球。ここまで11試合13回1/3を投げ、わずか2四球だった制球力は影を潜めた。「初めて投げる京セラドームのマウンドが高くて戸惑った」というが、この状況を裏でほくそ笑んでいたのが加藤康幸編成部長だった。「こういう状況から、どう立ち直るのかを見たかった」。すでに支配下選手登録の方針は変わらないとはいえ、底力を見極めるには確かにピッタリな状況だったかもしれない。

 初回に2点を失ったが、2回から立ち直った。3回には中軸のペレス、原口、新井を3者凡退に仕留めるなど2~4回を1安打1四球で無失点。4回2安打2失点と、まずまずの結果で終えた。直球が乱れても得意球のスライダーやカーブ、その中間の「スラーブ」といった変化球を駆使してカウントを整えたのは、新人では立派なことだ。試合後、支配下登録の契約を結び、そのまま福良監督にあいさつ。「ここからが勝負。早く一緒に野球ができるように上がってきてほしい」と声を掛けられた塚田も感激の面持ちだった。

 調べてみると、育成選手として入団し4月に支配下登録されたのは球団初。「急いでいたわけではない」と加藤編成部長は話したが、続けて「こちらが課していた課題を全てクリアしてくれた」と、うれしい誤算もあったようだ。投手陣に左が少なく、しかもサイドスロー。球団にしてみれば、思惑通りの補強にもなったわけだ。

 試合後、塚田からようやく笑みがこぼれた。「京セラドームでやらせてもらえるのは、マウンドを確かめるいい機会だと思った。高さに戸惑ったけど、経験できたので次につながる。きょうは自分の適応テストだったような気がする」。目標だった壁をクリアし、22歳の顔にも安堵感が漂った。白鴎大では先発もこなしてきただけに、チームは中継ぎと限定せずに調整させる方針。「シュートも安定してきた。スライダーだけでは通用しないと思ったので」と、新球もまずまずの手応えがあるようだ。

 その夜、1軍は西武に快勝。長い一日だったが、記者冥利(みょうり)に尽きる日だった。決して遠くない1軍デビュー戦も、期待せずにはいられない。(鶴崎 唯史)

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2016年4月26日のニュース