井納 創設5年目DeNA巨人戦初完封 調子は「最悪」だった

[ 2016年4月24日 08:25 ]

<巨・D>完封勝利の井納は戸柱(左)とがっちり握手

セ・リーグ DeNA3―0巨人

(4月23日 東京D)
 DeNAの井納翔一投手(29)が23日、巨人戦に先発し、今季2勝目を完封で飾った。自身2年ぶり2度目の完封は切り替えの早さが功を奏した。2回まで4安打を浴びるとフォークから直球、さらにスライダーを主体に変えた。終わってみれば散発5安打で9三振を奪った。巨人戦の完封勝利は、球団では前身の横浜時代の09年以来7年ぶり。日本人投手では11年ぶりで、DeNAとしては史上初だった。

 決して調子が良くて完封したわけではない。井納はどん底の状態でマウンドに上がっていた。

 「ブルペンは最悪だったけど、開き直った」。試合前の投球練習では上半身と下半身が連動せず、制球がばらついた。捕手の戸柱も「いつもとは違うと思った。悪かった」と心配していた。

 そのため、序盤は最大の武器であるフォークを多投。だが甘く入る場面が目立った。初回、2回に浴びた4安打のうち3安打はフォークだった。

 中盤に入ると、配球を切り替えた。活路を見いだしたのは最速149キロの直球だった。5、6回の3者凡退は全て直球が勝負球。「後半の方が大胆に攻めることができた」。腕を強く振ることでフォームに躍動感が出た。自然とバランスも良くなった。7回に3点の援護をもらうと、今度はスライダーを軸に切り替え、最後まで的を絞らせない。3回以降はわずか1安打。9三振を奪い、2年ぶりの完封である。試合前の緊張した表情とは別人の笑みが広がった。

 「打線が苦しい中で粘る投球ができた。0点で抑えようという気持ちだけだった。低めを意識してしっかり投げることができた」

 思えば、自身初の開幕投手も「どん底」からつかんだ。3月19日の西武とのオープン戦(西武プリンス)で4回無失点の好投。開幕ローテーションの最後の6番目に滑り込んだ。さらに山口が故障で開幕投手を回避すると、ラミレス監督から急きょ大役に指名され、広島との開幕戦で勝ち投手になった。そして、開幕23試合目でのチーム初完封劇。ラミレス監督は「井納の試合。今日はエースだった」と称えた。

 その指揮官は美保夫人との間に生まれた長男の剣侍(けんじ)君が21日に1歳の誕生日を迎え、土曜日のこの日、妻の「ママ友」が集まってパーティーを開いた。そのことを伝え聞いた井納はウイニングボールを手に「監督にあげたいですね」と笑った。チームは2連勝も借金はまだ7もある。「正直まだ自信をつかんだということはないが、一生懸命投げるだけ」。孝行息子は力強く言った。 (中村 文香)

 ≪球団17年ぶり3人目≫井納(D)が14年5月23日の日本ハム戦以来、自身2度目の完封勝利。前身球団を含めDeNA投手の巨人戦完封は09年10月2日のランドルフ以来で、日本人投手では05年6月22日の土肥以来。また敵地東京ドームで日本人投手による巨人戦完封は89年8月16日の欠端、99年5月14日の斎藤隆に次ぎ、球団17年ぶり3人目となった。

続きを表示

この記事のフォト

2016年4月24日のニュース