内川V弾男泣き「熊本地震」被災者に届け「見てくれた人笑顔に」

[ 2016年4月16日 05:30 ]

<ソ・楽>お立ち台で熊本の震災のことを話涙ぐむ内川

パ・リーグ ソフトバンク3-2楽天

(4月15日 ヤフオクD)
 内川、被災者に贈る涙のV弾!ソフトバンクは熊本地震から一夜明けた15日、本拠ヤフオクドームで楽天と対戦。国旗を弔旗にし、ユニホームに喪章をつけて試合に臨んだ。4回1死一、二塁で4番・内川聖一外野手(33)が楽天先発・則本昂大投手(25)から2号3ランを放ちそのまま逃げ切り今季最長の5連勝で貯金2、首位ロッテに1・5差とした。また4回柳田悠岐外野手(27)がパ・リーグ新記録となる16試合連続四球を記録した。

 ヒーローの笑顔はみるみる泣き顔になった。この日、ずっと抱えていた感情が涙となってこぼれ落ちた。声を震わせた内川は一夜にして被災地と呼ばれるようになった熊本への思いを語った。

 「ぼくも一人の子を持つ父。地震があって、子供を抱えながら避難される姿や一生懸命、生きようとされる姿を見ると、こういうことはあってほしくないと思った」

 もやもやしたままの試合だった。前夜、午後9時26分に福岡市内の自宅で突然、強い揺れに見舞われた。緊急地震情報のアラームが鳴り、3歳の長女がそのたびに目を覚まし、不安がった。震度7だった隣県の被害が分かったのは、この日の朝。「重たい気持ちだった」と喪章の着いたユニホームに袖を通しても切り替えきれなかった。チームも楽天・則本に3回まで完全に抑えられた。

 ただ、4回1死一、二塁と最初の好機が訪れる。初球132キロのフォークは真ん中にきた。「則本君は真剣勝負できる。小手先でヒットが打てる投手ではない。自分が持っているものを全部、使った」。強敵の剛球は心の迷いを消してくれた。フルスイングした打球は左中間席へ飛び込む2号3ランだ。あまりの会心の一撃に「うそやろ」と心の中で叫びながらダイヤモンドを一周した。

 13年7月に東日本大震災の被災地・福島で行われたオールスターでMVPを獲得。「自分が実際に行くことが一番だと思った」と賞金を元手に14年オフから福島で野球教室を始めた。「11年はまだ、嫁さん(翼夫人)が(フジテレビアナウンサーとして地震)報道に関わっていた。恐怖や不安は見聞きしていた」と内川。10日のオリックス戦でたくさんの声援をくれた熊本のファンへ「少しでも気持ちが届けられたら…」ときょう16日の楽天戦(ヤフオクドーム)の試合前には長谷川選手会長や楽天の選手も加わり、募金活動を行う。

 チームは内川のこの一発を含めた2安打で今季最多の5連勝を飾った。工藤監督も「さすが、4番、キャプテンというのを示してくれた」と賛辞を惜しまない。「僕らは野球選手。見てくれた人が少しでも笑顔になるようなプレーをしたい」。涙の乾いた背番号1はそう力強く誓っていた。(福浦 健太郎)

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2016年4月16日のニュース