甲子園の内野が広くなっていた!深く守らせたい…平田コーチが提案 

[ 2016年4月15日 08:05 ]

昨年より内野の土の部分が広がった甲子園球場

 甲子園球場の内野が今季から広くなっていたのをご存じだろうか。外野の芝生を昨季から1メートル幅で刈り取り、内野の土部分が広がった。内野手が深く、広く守るため、阪神首脳陣が提案した措置で、鳥谷敬遊撃手(34)、西岡剛二塁手(31)らの守備範囲が広がったと聞く。広がる内野の背景を追った。(編集委員・内田 雅也)

 甲子園球場の内野が広くなった――との情報をもとに、グラウンドを管理する阪神園芸整備課長の金沢健児さん(48)に聞くと「えっ!?」と驚かれた。「どうして分かったんですか? 見た目では誰も気づきませんよ」。銀傘から内野を映すテレビカメラでも分からない変化だそうだ。

 そして「確かに、芝生を1メートル幅で刈り取りました」と認めた。内野は四分円の形をしている。外野芝部分との切れ目は「内外野境界線」や、文字通り芝の線で「グラスライン」と呼ばれ、投手板の中心からコンパスで円を描くようにしている。

 昨年までは中心から半径30メートルだった。今年から31メートルに伸びたというわけだ。

 この境界線に規則上の意味はない。インフィールドフライ判定の基準でもない。公認野球規則には野球場の規格が示されている。境界線は投手板中心から半径95フィート(約29・0メートル)となっているが、あくまで目安でしかない。塁間(90フィート=約27・4メートル)のように規定された距離ではない。

 今回、甲子園の内野を広げることになったのは昨年秋、阪神の平田勝男チーフ兼守備走塁コーチの進言が発端だった。金本知憲新監督が誕生し、昨年のヘッドコーチからチーフコーチとして継続して入閣していた。

 平田コーチは近年、遊撃手や二塁手の守備位置が深くなり、外野の芝生の上で構えることが増えたように感じていた。

 「芝の上で守っていると、打球が土と芝の切れ目でイレギュラーに跳ねることもある。何とかならないかと思ったことが一つ。それから、ウチの内野手を深く守らせ、守備範囲が広くなればいいかと考えた」

 内野手の意見を聞くと反対する者はなかった。提案を受け、阪神園芸は芝生刈り取りの工事を今年1月末に行った。平田コーチの進言を受け、鳴尾浜練習場も同様に1メートル幅で刈り取った。

 特に記者発表はしていないが、別に隠していたわけではない。甲子園では過去にも岡田彰布氏が二塁を守っていた当時、二塁後方のみ芝を、古くは藤田平氏が守る遊撃後方の芝も刈っていた。大橋穣氏(阪急)が守る西宮球場の遊撃後方の芝も深く刈られていた。いずれも広い守備範囲を誇る本人からの要望を受けてのことで、当時も発表などしていなかった。

 平田コーチの言うように近年、鳥谷や西岡、大和、上本ら二遊間の内野手が外野芝の上に守備位置をとることが目立っていた。打者ごとの打球方向の傾向などを分析したシフトの影響かと思われる。

 金沢さんも「阿部(巨人)、筒香(DeNA)や外国人などの時、芝の上に位置する二塁手や遊撃手をよく見るようになった」とみていた。

 大リーグ中継でも、極端なシフトを敷く場面をよく見かける。日本のプロ野球もシフトはより大胆になる傾向にある。

 もう一つ、深く守ることで守備範囲を広げたいという平田コーチら首脳陣の狙いが見える。

 鳥谷はセ・リーグ遊撃手で昨年、3年連続4度目のゴールデングラブ賞を受けた。守備力には定評がある。

 だが、気になる数字がある。セイバーメトリクスで使うアルティメット・ゾーン・レーティング(UZR)という指標。平均的な選手に比べ、どれだけ多く失点を防いだかを示す。映像でどこの打球を処理したかを確認して出す守備範囲をはじめ、併殺奪取、失策などで計算する。

 データスタジアム社のデータによると、2014年のセ・リーグ遊撃手UZRで、鳥谷は「-(マイナス)5・3」と12人中11番目。坂本(巨人)の「7・0」が上位にいる。同社が著した『野球×統計は最強のバッテリーである』(中公新書)にあり<詳細を見ると守備範囲の数値が低い>とあった。昨年のUZRも低く、かつてリーグ最多4度の補殺数も減っていた。

 阪神首脳陣は、攻守の要であり、キャプテンの鳥谷をいま一度、光り輝かせたいと願っている。今回の芝生刈り取りによる「広い内野」が、その後押しになる。

 「今年の鳥谷(の守備位置)は深いよ」と平田コーチは話した。「他球団の、特に人工芝を本拠地とするチームのショートは浅いからね。格段の差だよ。深く守るには足も肩もいる。守備範囲も広くなっているね」

 確かに今季、鳥谷の定位置は深くなった。後方に刈り取った今もなお、外野芝生の上に守っていることもある。

 そして二遊間、三遊間のゴロを懸命に追う。金本監督が開幕前に望んでいた「ユニホームを真っ黒にしてほしい」という姿がある。甲子園が鳥谷を、そして阪神内野陣を奮い立たせていた。

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