イチロー告白「あれ、アウト」 今季初安打は二塁走者本塁憤死で“幸運”

[ 2016年4月14日 05:30 ]

<メッツ・マーリンズ>7回に代打で今季初安打となる遊撃内野安打を放ち、一塁へ駆け込むイチロー(AP)

ナ・リーグ マーリンズ2―1メッツ

(4月12日 ニューヨーク)
 マーリンズのイチロー外野手(42)が12日(日本時間13日)のメッツ戦で今季初安打をマークした。7回2死二塁で代打出場し遊撃内野安打。メジャー通算2936本目で、並んでいたバリー・ボンズ打撃コーチ(51)を抜き歴代単独33位に浮上した。3000安打へ発進する1本となったが、本人は「アウト」だと告白。二塁走者の本塁憤死で攻撃終了したため、ビデオ判定に持ち込まれない“幸運”があった。

 背番号51は一塁を駆け抜けた。塁審の手が真一文字に広がった。待望の今季初安打だ。同点の7回2死から代打出場。シンダーガードの外角97マイル(約156キロ)に力負けせず鋭く遊撃左へ打ち返した。好守に阻まれたが、最後はイチローの足が勝った…かに見えた。

 二塁走者のディートリッチは微妙な判定の隙を突こうと三塁を蹴り、一気に本塁を狙っていた。すぐさま一塁手から転送されあえなく憤死。勝ち越し点は奪えず攻撃終了したが、このプレーがボンズ超えをもたらした。

 「あれ、アウトですけどね。ま、こういうこともあるわな」

 帰り支度のイチローは悪びれもせず、堂々と切り出した。「ディーツ(ディートリッチ)があんな賢いプレーをするとは思わなかった。あれは凄いプレーですね」と、結果的に初安打をアシストした走塁に冗談交じりに感謝した。一塁到達の瞬間に、アウトだという確信があったという。走者が本塁を狙わなければ、ビデオ判定が行われ、アウトになることは明白だったとイチロー。「でも、ヒットをアウトにされたことは何回もありますからね。それは悲観的になる必要はないです」と白い歯をこぼした。

 通算2936安打でボンズコーチを抜き単独33位となったことへの感想は「別に」。ただ当のボンズコーチは「イチローが俺を抜いたら、ヒットのボールは俺が頂くさ。イチローは偉大としか言いようがない」と試合前に言い放ち、この時を心待ちにしていた。混乱気味に攻撃が終わったことで球は回収されず、直接おねだりされていたイチローは「そんなこと言っていましたね。でもあのプレーではしようがないね」と口にした。

 チーム6試合目での初安打は、胃潰瘍で開幕を故障者リストで迎えた09年を除けばメジャー移籍後で最も遅い。第4の外野手として出番が限られる状況だが、それでも今季3打席目でマークした。剛速球を正確に捉えたスイング。打撃から一塁到達まで4秒を切ればかなりの俊足とされる中、この日は3秒84で駆け抜けた。42歳の年齢を感じさせない打撃と脚力が導いた初安打でもあった。

 チームは8回に勝ち越し、イチロー加入後2シーズン目で初めて勝率5割とした。13日(日本時間14日)のメッツ戦は「2番・中堅」で今季初めて先発に名を連ねる背番号51。金字塔へ、「イチメーター」がようやく動きだした。(ニューヨーク・笹田 幸嗣通信員)

  ▼マ軍・ディートリッチ イチローには“左前へ抜けたと思ったから行ったんだよ”と言った。結果はアウトだったけど、イチがボンズを抜くことになって良かったよ。

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