【斎藤隆氏パドレス留学記】学び多い米最先端「球場中心の都市再開発」

[ 2016年4月13日 09:20 ]

パドレスのオフィスでインターン生活を送る斎藤氏

 日米7球団でプレーし、昨季限りで現役を引退した前楽天の斎藤隆氏(46)が、新たな野球人生をスタートさせた。パドレスへの1年間のフロント留学。メジャーリーグの最先端の球団経営や編成業務を日々学んでいる斎藤氏が、隔週水曜日掲載でリポートします。

 サンディエゴでのインターン生活は毎日が刺激的で、野球漬けの一日を送っています。オフィスがあるのは、パドレスの本拠ペトコ・パーク。04年開場の美しい球場で、06年WBCで日本が初代王者に輝いた決勝の会場としても有名です。ペトコ・パークは、新球場が都市再開発の中心的な役割を担うというモデルケースになっています。

 それまでは、NFLのチャージャーズと本拠を共有。建設場所となったのは、サンディエゴでも港に近い、治安の悪い地域でした。そこに自治体が中心となって球場建設を進めた。建設費は4億4900万ドル(約485億円)。住民投票で承認を得て、その57%をサンディエゴ市が負担し、市内のホテルの宿泊費の一部が税金として充てられています。また、球場の入場料収入の一部も返済に組み込まれるシステムが出来上がっています。

 日本のように民間企業ではなく、自治体が主導で球場を建設し、再開発を進めるのが、米国のトレンド。サンディエゴもペトコ・パークを中心に、周辺には新しいホテルや高層マンション、ショッピングモールが次々と建設され、莫大(ばくだい)な経済効果を生んでいます。

 ハード面ではモデルケースとなっているパドレスですが、69年の球団誕生以来、ワールドシリーズ出場は84、98年の2度だけで、ワールドチャンピオンの経験はありません。メジャーの場合、成績が悪いと、翌年のドラフト指名でウエーバー順が優遇される。しかし、専門誌が、どれだけ優秀な若手を保有しているかを評価するマイナー組織全体の最新格付けは30球団中、26位。これは育成システムがうまく機能していないと言えます。

 チームは12年にオーナーが代わり、14年8月にはレンジャーズで若手育成の発掘に定評があったA・J・プレラー氏をGMに招へい。まずは長期的な育成システムの改革が必要で、今はスカウトの教育から見直している段階です。まさに今は変革期。そのリアルな過程を現場で目にし、そして携わることができるのは、本当に貴重な経験だと思っています。(前楽天投手)

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2016年4月13日のニュース