中畑氏 神聖な神宮“物置”じゃ切ない…五輪野球競技の会場に

[ 2016年4月12日 11:20 ]

東京五輪・パラリンピック組織委が大会前後の使用中止を要望している神宮球場

 【東京五輪組織委の神宮球場使用中止要望への中畑清氏の思い】

 新国立競技場、エンブレム問題に続いて…。2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が大会期間前後の神宮球場使用中止を要望しているという。野球・ソフトボールが種目に復活して、その会場にするのなら分かるよ。でも、期間が5月からの半年間と長く、用途は「野球以外」。機材置き場にされるかもしれないって。

 日本において野球というスポーツはそんなに軽いものなの?“国技”でしょ。中でも神宮球場は特別な存在。甲子園球場誕生の2年後、1926年(大15)に開場。東京六大学野球リーグ戦の開催球場として建てられ、32年から東都大学野球リーグ戦も開催されるようになった。64年からはプロ野球ヤクルトの本拠地球場として多くのファンに親しまれている。

 甲子園が高校野球なら神宮は大学野球の聖地。私は福島県の安積商(現帝京安積)からこの球場に憧れて駒大に進んだ。神宮でプレーしたいという一念で練習。野球選手だけじゃなく、人としても育ててもらった。人間教育の場でもある神聖な球場が物置にされるなんて想像したくない。

 五輪の重さは身をもって体験している。04年のアテネ五輪。病に倒れた長嶋茂雄監督に代わり、ヘッドコーチとして指揮を執らせてもらった。東京では64年に続いて2度目の開催。新国立競技場の隣で警備上、重要なロケーションにあるというのも分かる。

 国家の威信が懸かった一大イベント。野球界もできる限り協力しなきゃいけないと思う。でも、シーズン真っ盛りの半年間は長すぎる。開会式が7月24日で閉会式は8月9日。その前後を加え、せめて1カ月以内に抑えられないか。用途も機材置き場じゃ切ない。
 最先端技術を駆使した新国立競技場の隣にたたずむ古き良き球場。その歴史と伝統にふさわしい五輪貢献…。やっぱり野球競技の会場にすればいいのよ。 (スポニチ本紙評論家)

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2016年4月12日のニュース