【甲子園百景・春】中学監督から2年 古豪復活させた高松商・長尾監督

[ 2016年4月1日 08:00 ]

<智弁学園・高松商>ベンチから指示を出す高松商・長尾監督(右)

第88回選抜高校野球大会第11日・決勝 高松商1―2智弁学園

(3月31日 甲子園)
 56年ぶりに狙った紫紺の大旗には届かなかった。延長11回、サヨナラの幕切れに終わった高松商には、違う感慨をもって拍手を送りたい。

 長尾健司監督(45)は3年前までは中学校の監督。香川県の公立校人事交流で突然、高松商の監督に就任した。創部100年を超える伝統校。OBからは「中学の監督?大丈夫か?」の声が上がったという。しかし、就任2年目の昨年、明治神宮大会で優勝。秋の日本一に輝くと、OBの批判はピタリと止まった。

 「高松商の伝統を守れているかと言ったら分かりません。崩しているところもある。ただ、子供たちのいいところを引き出したいと思ってやっています」

 中学の野球は軟式だから1点をどう奪うかが大事。工夫した練習でチームを日本一に導いた手腕で、米麦(よねばく)主将、美濃、植田兄弟らの長所を伸ばし、浦も本当のエースに育った。

 明治神宮大会優勝からプレッシャーは相当のものがあったろう。立派な準優勝だが高松商の指揮官として「優勝と準優勝では天と地の開きがある。私自身もいい経験をさせてもらったし、指導力不足を痛感しました」と、自らを責めた。

 中学の監督だった人が丸2年でセンバツの決勝まで進出。古豪復活を印象付けた。これはカテゴリーが違っても、やり方一つで勝ち上がれることの証明。高校野球にまた違う可能性を示してくれた。(落合 紳哉特別編集委員)

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2016年4月1日のニュース