明石商・吉高145キロ完封!“憧れ”東邦・藤嶋に投げ勝った 

[ 2016年3月27日 05:30 ]

<明石商・東邦>東邦に完封勝利し、ガッツポーズで喜ぶ吉高(手前)と藤井の明石商バッテリー

第88回センバツ高校野球2回戦 明石商3―0東邦

(3月26日 甲子園)
 2回戦3試合があり、春夏通じて初出場の明石商(兵庫)が8強へ進んだ。エースの吉高壮投手(3年)が東邦(愛知)を散発5安打に抑えて完封、投打二刀流で注目される藤嶋健人投手(3年)との投げ合いを制した。

 窮地を耐える度に身長1メートル70の吉高は右拳を強く握りしめた。「勝ててよかったという気持ちでいっぱいです」。初出場の明石商を8強へ導いた立役者は胸を張った。

 序盤から力強い直球を軸に全開で挑んだ。相手は1回戦の関東第一戦で先発全員14安打を放った東邦打線。「4番投手」には約1年半前には遠い存在だった男の名前もあった。燃えていた。3回1死で松山を見逃し三振に抑えた一球は145キロを計測。16日の練習試合で今秋ドラフト候補左腕の履正社・寺島と投げ合った際の自己最速144キロを更新した。

 仲間から「飛ばしすぎや」と言われ、中盤3回は冷静に6つの内野ゴロを積み重ねた。1点優勢の7回、自らのけん制悪送球も絡んだ1死二、三塁。最大の危機で再び145キロを計測してギアを上げた。松山を得意のスプリットで一ゴロ、高木は右飛に退けた。

 中学時代は肩や肘の故障に悩まされ、明石商入学時も内野手志望だった。「身長も高くないし、投手としての才能も低かった」。転機は1年夏の大会前。中学時代の制球力を知る狭間善徳監督に再転向を勧められた。同時期、テレビ画面を通して見た甲子園では同じ1年生だった東邦・藤嶋が投げていた。「かっこええなあ、と思って…」。尊敬にも似た感情を覚えた同世代との直接対決が大舞台で実現。喜びを白球に込め、9回を投げ抜いた。堂々の完封劇に「考えられないです」と声がはずんだ。

 中前打と左越え二塁打を打たれた藤嶋から9回の最後の対決では外角直球で空振り三振を奪った。試合後の整列では直接言葉をかけようとしてかなわなかった。「向こうはキャプテンなんで(列の先頭にいて)離れていて無理でした」。伝えたかったのは投げ合えた感謝の思いだ。「緩急の使い方やマウンドさばきがすごい。まだ超えたとは思っていません」。小さなエースは藤嶋を“ライバル”と呼べる場所までたどり着いた。 (石丸 泰士)

 ◆吉高 壮(よしたか・そう)1998年(平10)10月18日生まれ、兵庫県朝来市出身。小1時に生野ジャイアンツで野球を始め投手兼捕手。生野中では朝来ボーイズで主に内野手。明石商では1年秋から背番号1でベンチ入り。スプリット、カーブ、縦横2種類のスライダー、チェンジアップ、シュート。50メートル走6秒4、遠投110メートル。1メートル70、75キロ。右投げ左打ち。

 ≪近畿勢4校の8強入りは08年以来8年ぶり≫龍谷大平安と明石商が勝ち、前日の智弁学園と滋賀学園に続き8強進出。近畿勢4校の8強入りは08年以来8年ぶり。しかも、4校でトーナメントの片側を占め、近畿勢の決勝進出が決まった。同様の現象は第9、20回大会に続く3度目でいずれも近畿勢。

 ≪公立校は11年の加古川北以来≫兵庫県の公立校の8強入りは11年の加古川北以来。

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