【甲子園百景・春】日南学園・森山「大投手」になって夏また会おう

[ 2016年3月23日 08:50 ]

<明石商・日南学園>日南学園先発の森山

第88回選抜高校野球大会1回戦 日南学園2―3明石商

(3月22日 甲子園)
 塁は埋まっている。カウント1―1。三塁走者がスタートを切る。明石商・藤井が転がした白球に日南学園のエース森山がマウンドを駆け下り懸命に本塁に送球したが間に合わない。歓声と悲鳴の中、今大会初のサヨナラゲームに小さなエースは静かに目を閉じた。

 「小さな体でも投手ができることを証明したい」。そう言ったのは1メートル70の滋賀学園・神村。それより10センチ低い森山も思いは同じ。「野球は体の大きい小さいでやるスポーツじゃありませんから」。背番号1を背負う投手32人の中でもちろん最も低い。報道陣に囲まれたら隠れてしまう男が堂々と言ってのける。「コントロール、それにけん制とかフィールディングには自信ありますから」。真っすぐは130キロに達しない。それを補い内外角に投げ分け、変化球も駆使。第1打席で二塁打を許した4番・小西には、その後、内角を徹底的に攻めて3打席抑えた。

 「やられたらやり返す気持ちで投げた。でも自信を持っていたバント処理でミスしたのはボクの実力不足です」。9回、サヨナラ負けの原因の一つとなったバント野選。ピンチが広がって、スクイズを許す結果となった。主将として敗戦の責任を背負った。そんなエースを金川(きんかわ)監督は「あの体で本当によく投げてくれた。言うことないじゃないですか」と褒めた。夏、“小さな大投手”になるために、悔しさという土産を持って甲子園を去った。

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2016年3月23日のニュース