【甲子園百景・春】「昭和」感じさせた釜石VS小豆島

[ 2016年3月22日 08:00 ]

第88回選抜高校野球大会の釜石戦で、背番号18を付けて声援を送る小豆島の応援団

第88回選抜高校野球大会1回戦 小豆島1―2釜石

(3月21日 甲子園)
 早朝から小豆色のジャンパーを着た年配の人たちが続々と甲子園に集まってくる。背中には「18」の番号。選手が17人しかいない小豆島の18人目の選手を表す数字。4000枚作っても足りない。島の人口3万弱。フェリーとバスを乗り継いで甲子園にやってきた人、東京、大阪を中心に小豆島出身者も駆けつける。この日のために、小豆島高校の体育館で島民一緒になっての応援予行演習もした。手作り感満載の三塁側アルプスは、釜石の佐々木偉彦監督が「凄い応援でしたね」と言うほど、大音量で島の子供たちを奮い立たせた。

 「監督が素晴らしい人で、目標設定をしっかりやっている。子供たちも凄く成長していますよ。きっと、この子たちが将来、島を変えてくれると思います」。2日前に大阪入りし、この日に備えた島在住の藪脇元嘉さん(68)は、小豆島の活性化にまで話が及んだ。

 4万2000人の観衆が見守った試合は9回に1点を返し、一打同点のシーンをつくった。しかし、あと1本が出ず無念のため息が漏れたが、あいさつに来たナインには「よくやった!」と、甲子園に連れてきてくれた子供たちに感謝の拍手を送った。

 ともに21世紀枠。私は釜石にも小豆島にも勝ってほしかった。矛盾する思いは両校のひたむきな姿勢から来るものだった。カラーというより、モノクロで見たいような昭和を感じさせた試合。甲子園を楽しんでくれただろうか。1時間32分、心に響く好試合だった。(落合紳哉特別編集委員)

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