金銭授受問題でプロ野球選手の「常識」は「非常識」に

[ 2016年3月16日 08:50 ]

9日のソフトバンクとのオープン戦の試合前、円陣を組む巨人ナイン

 プロ野球選手の「常識」は巨人で起きた野球賭博問題に端を発し「非常識」に変わった。そんな印象を受ける。今回の金銭授受問題についてだ。

 開幕を目前に控え、高木京の関与による野球賭博問題の再燃。福田、笠原、松本竜元投手に続く4人目が発覚し、新たなに声出しを担当した選手が勝ち試合で金銭を受け取ることも明るみになった。これが他球団にも「飛び火」し、ライバル球団の阪神や、西武でも同様のことが行われていたことを明らかにした。

 巨人では、投手と野手に分かれて行われる試合前の円陣で「声出し」をする選手が試合に勝てば、それぞれ1人から5000円ずつを受け取り、負ければ1000円ずつを支払っていたという。巨人の森田清司総務本部長は「験担ぎの意味合いもあり、賭け事とは全く異質の行為」と強調した。確かに勝利への「ご祝儀」であり、敗退行為が行われていたとは思わない。それでも野球賭博問題が起きた後だけに世間からみれば、巨人内で賭け事が横行していたと思われてしまう。悲しいかな、それが現実だろう。

 「声出し」による金銭授受が始まったのは、チームが低迷した12年春頃。昨季まで4年続いていたことになる。笠原元投手らの野球賭博への関与が始まったのが14年。それ以前からチーム内で金銭のやりとりが行われていたわけで、選手が試合にお金を賭けることに対しての「抵抗感」が希薄になったと考えられなくもない。熊崎勝彦コミッショナーも「巨人選手の賭博問題を引き起こす要因、背景の一つになったと捉えている」とコメントしている。

 今回の金銭授受問題は野球賭博に関与したことで無期失格処分を受け、巨人に契約を解除された笠原元投手が一部の新聞社に語ったことで明るみになった。昨年11月の日本野球機構(NPB)の調査委員会による最終報告にも盛り込まれていたが、実例を記さなかったことで、巨人とNPBは明らかにせざるを得なかったといえる。違法性のある野球賭博問題と同列に扱うのは違和感もあり、巨人は足を引っ張られていると感じる。

 「声出し」による金銭のやりとりに加え、ノックでミスをした選手への罰金も問題視された。「チャリーン!」。ノック中に選手同士で言い合う。現場で取材をしている野球記者なら、昔から何度も耳にしている言葉だ。野球賭博問題が起きたことで、選手は野球に関する金銭授受を一切禁止された。「チャリーン!」は、もう聞けない。(記者コラム・飯塚 荒太)

続きを表示

2016年3月16日のニュース