南相馬市出身、JR東日本東北・西川和 東北魂の力投「特別な日」

[ 2016年3月12日 05:30 ]

<JR東日本東北・鷺宮製作所>8回2/3を無失点と力投するJR東日本東北・西川和

東京スポニチ大会Bブロック JR東日本東北2―0鷺宮製作所

(3月11日 横浜)
 11日、3会場で予選リーグ8試合が行われた。宮城県利府町に本拠地を置くJR東日本東北は、鷺宮製作所に2―0で競り勝ち、2年連続の決勝トーナメント進出に前進。福島県南相馬市出身の西川和美(かつみ)投手(25)が8回2/3を投げ、5安打無失点と好投した。新日鉄住金かずさマジックは富士重工を8―2で下し、予選リーグ突破を一番乗りで決めた。12日は3会場で予選リーグ8試合が行われる。

 自身の記録には無関心だった。JR東日本東北の右腕・西川和は、完封目前の9回に2安打と四球で2死満塁のピンチを招いた。あとアウト1つでの降板。前日に完投勝利を挙げた西村が締めてくれた。

 「(完封を逃すのは)それも僕らしいかなと。きょうは震災に遭った人には特別な日。いい結果が出てホッとしている」

 試合前、藤井省二監督から「きょうはどういう日か分かっているよな」と、先発を告げられた。立ち上がりから130キロ台の直球と90キロ台のスローカーブの緩急を駆使。6回1死までパーフェクトに抑えるなど、8回2/3を5安打に封じた。「日程を見た時から3月11日は試合があるなと。期待に応えようと思った」と照準を合わせていた。

 この日は横浜、神宮、大田の3会場で第2試合の試合前に選手全員が黙とうをささげた。自身は福島第1原発近くの南相馬市出身。実家は半壊し、現在も父・三夫さん(59)、母・春江さん(53)は、鹿島地区の仮設住宅で暮らしている。「何ができるわけではないけど野球を頑張って両親や友人を喜ばせたい」と、何としても勝利を届けたかった。

 チームは5年前、広島でキャンプ中だった。交通網が復旧するまで約2カ月間、地元に帰れなかった。指揮官は「5年前は気が気じゃなかった。昨年は(3月11日に)サヨナラ勝ち。背中を押してくれる東北の人がいる。我々は一生懸命に野球をやるだけだと思う」とかみしめた。

 東北への思いを胸に、全力で投じた112球。西川和は「いっぱい投げたので疲れました」と言いながら、大役を果たした余韻に浸った。 (川島 毅洋)

 ◆西川 和美(にしかわ・かつみ)1990年(平2)11月25日、福島県生まれの25歳。小2から小高スポーツ少年団で野球を始め、6年時から投手。小高中では軟式野球部に所属。小高工では2年夏にベスト4。東日本国際大では3年春まで外野手、同年秋から投手に復帰。13年にJR東日本東北に入社。1メートル81、90キロ。右投げ右打ち。

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