巨人オーナー代行に元地検特捜部長 賭博究明へ、初の社外取締役

[ 2016年3月10日 05:30 ]

オーナー代行の就任が決まった松田昇氏

 新たに高木京介投手(26)の野球賭博への関与が発覚した巨人は9日、渡辺恒雄球団最高顧問(89)ら幹部3人の引責辞任を受け、新役員人事を発表。オーナー代行には巨人では初の社外取締役となる元東京地検特捜部長の松田昇弁護士(82)が就任し、再発防止と全容解明に取り組む。巨人は10日に野球協約で定められているコミッショナーへの告発を行う。高木京はこの日、東京・大手町の球団事務所で記者会見し、涙ながらに謝罪した。

 夕方に急きょ行われた会見。高木京は涙ながらに野球賭博に関与したことへの後悔と、関係者やファンの期待を裏切った謝罪の思いを口にした。会見後、球団は幹部人事を発表。前日の渡辺恒雄球団最高顧問、白石興二郎オーナー、桃井恒和球団会長の「トップ3」の辞任を受け、再発防止への取り組み強化と全容解明へ新体制で踏み出す。

 賭博問題の調査で大きなネックとなっているのが、民間企業として「身内が身内を裁く」ことの難しさ。この状況を打開するため、球団史上初めて、読売グループ外から社外取締役を招いた。球団の特別法律顧問で、賭博問題を受けて発足した球団の「紀律委員会」のメンバーも務めている弁護士の松田昇氏だ。

 「おごらず、気負わず、そしてひるまず」が口癖の松田氏は東京地検特捜部時代、ロッキード事件やリクルート事件でも活躍した。厳格な一面は、春季キャンプ中にも見られた。「紀律委員会」は2月8日に有害行為の再発防止に向けた研修会を実施したが、松田氏はその席でナインを前に「巨人軍選手の原点に戻って、誇りを持って」などと語りかけた。「球界の盟主」に厳しい目が注がれる中、外部招へいは事態の重さを物語る。球団関係者は「外部の目を入れることによって、球界の古い体質にもメスを入れられると期待しているのではないか」と話す。

 白石オーナーの後任としては、読売新聞グループ本社取締役最高顧問の老川祥一氏が就任する。11日に開かれる臨時株主総会と、その後の臨時取締役会で正式決定する。

 4人目の賭博関与発覚で、巨人から相談を受ける警視庁も全容解明に乗り出す。捜査関係者によると、今後、高木京から任意で事情を聴く方針。既に笠原、福田、松本竜の元選手3人と、日本野球機構(NPB)が野球賭博常習者と認定した仲介役の男性2人からも任意で聴いている。「胴元」と呼ばれる主催者を特定、立件できるかが焦点。胴元までには複数の仲介役が関与するケースが多く、たどり着くのは容易ではないが、捜査関係者は「暴力団の関与まで明らかにする」と力を込める。

 25日にプロ野球の開幕を控えるという最悪のタイミングで発覚した新たな野球賭博への関与。球団は松田氏のこれまで以上の後押しを受け、警察への協力体制も強化する。うみを出し切るのは決して簡単ではないが、信頼回復へ全力を注ぐ。

 ◆松田 昇(まつだ・のぼる)1933年(昭8)12月13日、北海道出身の82歳。中大法学部卒。63年に東京地検検事。87年に特捜部長、95年に最高検刑事部長。05年4月から、読売新聞グループ本社特別法律顧問・読売巨人軍特別法律顧問に就任した。

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