高田高校 本来の練習場所に今も仮設住宅 駐車場が「新球場」

[ 2016年3月10日 09:10 ]

広田湾と陸前高田市を臨むコンクリートの駐車場でクロスプレーの練習をする菅野大樹(左)と村上諒平
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復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年

 アップシューズのまま、高田高校ナインがグラブをはめた。陸前高田市の新校舎横の緩やかな坂を下りると、大型駐車場がある。そこにホームベースが置かれる。3月。アスファルトにできた「新球場」で、走者を置いたケースノックが始まった。

 発案者の伊藤貴樹監督(35)は「アスファルトの上でも、土のグラウンドをイメージしながら野球をやってもいいかなと。対応力が上がってくれれば」と狙いを説明する。昨秋は県16強入りも、花北青雲に5―11で敗れた。指揮官はこの冬「どんな状況でも、どんな相手でも自分たちのペースで野球をやれ」と繰り返してきた。それは駐車場での実戦練習でも同じだ。

 二塁を守る伊藤智也主将は、二遊間を組む長沼柊副将と軽快な動きを見せた。伊藤は「最初は戸惑ったけど、適応できた。イレギュラーがない分、守りやすい」と話し、長沼も「どんな場所でも普通に野球ができるようになる。動じないことにもつながると思う」と、前向きな言葉が並んだ。

 大船渡市内のグラウンドまでは車で約30分。新校舎に隣接する本来のグラウンドには今も仮設住宅が立つ。普段は室内練習場と2カ所に分かれて練習するが、「新球場」では全員が広大なスペースで動き回れる。伊藤新コーチは言う。「震災から5年たっても、グラウンドが離れた環境は何も変わっていない。でも、これから先、上がっていくしかない」。白球を追う場所は、土の上じゃなくたっていい。(川島 毅洋)

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