DeNA山口 開幕投手指名でエースの自覚「重圧よりやりがい」

[ 2016年3月6日 09:50 ]

DeNAの山口

 地位は人を作る――。それなりの地位につくと、その地位にふさわしい人間に成長していくという言葉だ。そうなって欲しいとの思いを込め、DeNAのラミレス監督は都内の自宅からある選手に電話をかけた。16年が幕を開けたばかりの1月4日のことだった。

 「開幕投手としてチームのエースになってほしい。俺は信頼している」。11年目を迎える山口への開幕投手指名の電話だった。昨季はわずか3勝(6敗)に終わった右腕の異例の抜擢。ここから、エース・山口としての16年が始まった。

 初の大役指名に燃えないはずかなかった。2月1日からの春季キャンプ(沖縄・宜野湾)では第1クールから飛ばした。ブルペンで1日に245球を投げ込むなどハイペースで調整。もちろん、やみくもに投げ込んだ訳ではない。昨年11月の秋季キャンプ(鹿児島・奄美大島)から状態がいいという投球フォームを、体に染みこませる狙いがあった。「考えながら投げていると気がついたら200球を超えていた」。今キャンプでの全投球数は1978球。例年は1300球前後だっただけに「(体の)張りもなく、良い感覚で投げることが出来た」と充実の表情を浮かべた。

 「今は良い意味で楽しんで野球がやれている。開幕指名の影響?もちろん、それはありますよ」。エースとしての自覚を持って、投手陣をけん引している。ブルペンでの投球練習もそう。「1球1球考えながら投げている。若い選手にもそういう練習をして欲しい」。言葉でなく、行動で示すタイプ。自らアドバイスをすることは少ないが、尋ねられると惜しみなく助言を送った。

 そんなエースの姿はチームに、プラスの影響を与え始めている。ドラフト1位左腕・今永は3月2日のヤクルト戦(横浜)で、3回に無死二塁のピンチを背負った時に山口の投球姿を思い浮かべたのだという。「キャンプで山口さんの投球を見た時、普通ならどんよりした空気になる場面でもどっしりとされていた。これが開幕を任される投手の振る舞いなんだなと思った」。マウンドで動じることのない山口の姿を目に焼き付けていたルーキー左腕はピンチを切り抜け、5回1安打無失点。「そういう姿を見て勉強したので」と胸を張った。

 ここまで実戦3試合に登板し、12イニング無失点と圧巻の内容。昨秋キャンプからの好調を維持しており「いままでにない感覚」だという。3月25日の広島との開幕戦(マツダ)は刻一刻と近づいている。それでも「(開幕指名の)監督の言葉で“やらないといけない”という思いが強くなった。開幕投手のプレッシャー?それよりも、やりがいを感じますよ」。そう話す山口には、すでにエースの風格が漂っていた。(記者コラム・中村 文香)

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2016年3月6日のニュース