キューバ熱冷めた日本球界 今後は「ルート」生かし原石発掘の道を

[ 2016年2月27日 09:45 ]

「キューバの至宝」と呼ばれたセペダ

 これがMLBの、ひいては米国の底力なのだろう。だが、球界関係者のこれまでの尽力を思うと何だか悔しい気もする。

 昨年12月。元ヤンキース監督のジョー・トーリ氏率いる一行が、キューバを訪問した。メンバーにはドジャースのカーショーやタイガースのカブレラらスーパースターに加え、ホワイトソックスのアブレイユ、ドジャースのプイグらキューバから亡命した選手も含まれていた。選手らは現地で野球教室などを行い熱烈な歓迎を受けたという。

 キューバは61年に米国と国交を断絶後、亡命選手の入国を禁ずるなど当然のことながらMLBとは関係が悪かった。言葉は悪いが、そこに日本球界の付け入る隙があったと思う。キューバがプロ選手の国外活動を認めたのを機に、14年4月にまずは巨人が「至宝」と呼ばれたセペダの獲得に成功した。さらにDeNAがグリエル、ロッテがデスパイネを相次いで獲得。他球団も高い関心を示し、キューバ政府公認のルートは一気に注目を集めた。当時取材した同国大使館のデルガド3等書記官が「日本に来る選手はもっと増える」と話していたのを思い出す。

 日本はこれまで、アマ球界や巨人がそれぞれのルートでキューバと良好な関係を築いてきた。カストロ議長と親交のあった全日本アマチュア野球連盟の山本英一郎会長(当時)は、中日入りしたリナレスや、社会人野球のシダックスでプレーしたキンデラン、パチェコの来日に尽力。巨人は長嶋茂雄終身名誉監督が独自のパイプを築いてきた。11年にはバルセロナ五輪監督を務めた山中正竹氏、早大監督を務めた応武篤良氏と巨人・井上真二スカウトのプロアマ混合の3人が現地に赴き、指導者に日本の野球を伝授したこともある。

 ところが、セペダの不振やグリエルの退団騒動もあり、日本球界のキューバ熱は一気に冷めた。対照的に米国はオバマ大統領がキューバとの国交正常化交渉の開始を電撃表明。冒頭のMLB選手団の派遣などもあり、両国には雪解けムードが漂う。となると一時は日本を向いたキューバの有望選手の目は、再び資金力に勝る隣国のMLBに向くだろう。

 だが「キューバルート」が途絶えたわけではない。現在、巨人はキューバの22歳の外野手・ガルシアと入団交渉中だという。今後、グリエル級の選手はもう日本に来ないかも知れない。だが、隠れた逸材はまだまだいるはず。これからは原石を磨くことで、キューバの野球を日本で感じさせてほしい。(記者コラム・白鳥 健太郎)

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