半年前は大阪桐蔭の8番打者 DeNA青柳が見せた将来性

[ 2016年2月12日 12:24 ]

DeNAの青柳

 プロ野球春季キャンプも中盤を迎え、そろそろ一軍入りをかけて若手選手が火花を散らす時期がやってきた。アマチュア野球に詳しいライター・菊地高弘氏が、春季キャンプで目についた若手選手をレポートする。

 フリーバッティングでのスイングを見て、目を疑った。

「これが高卒1年目のドラフト下位指名選手のスイングなのか……」

 紅白戦に出場するため、一軍のキャンプ地・宜野湾に招集された高卒新人が、猛烈なスイングで快打を連発していた。

 腰のターンが鋭く、インパクトでボールに力を強く伝えられるスイング。高卒ルーキーの多くは金属バットから木製バットへの移行に苦しむが、そんな戸惑いを微塵も感じさせない。ミートの精度はこれから身につけるとしても、ここまで強く振れること自体が将来性。現時点では十分すぎるほどの可能性を感じさせた。

 DeNAドラフト6位ルーキー・青柳昂樹外野手。大阪桐蔭高では2年時から甲子園でプレーしている。だが、高校時代の青柳に、ここまでスイングの迫力は感じたことがなかった。しかも昨年の夏、大阪府大会に出場した青柳の打順は8番である。身体能力は高いのに、それを野球に生かせていない。それが青柳の印象だった。それにしても、大阪桐蔭高という全国屈指のエリート校とはいえ、高校野球の8番打者が半年後にプロの世界で頭角を現すなど、誰が想像できるだろうか。

「『自分に負けない』ということを考えてやっています。高校時代は打てないときに当てにいってしまって、不完全燃焼でした。受身じゃなくて、積極的に攻める。どんな球も振り切ることをアピールポイントにしたいと思っています」

 すでにキャンプでは3本のバットを折っているという。7日の紅白戦では、1打席目の初球、砂田毅樹のスライダーをとらえ、センター前に初ヒットを放った。

「砂田さんは一軍で投げているピッチャーで、自分のほうが下だと知っているので、とにかく初球から振っていこうと思いました。会心の当たりではなかったけど、しっかり振ったのでヒットになったのかなと思います」

 青柳がフルスイングにこだわるのは、今や球界を席巻している大阪桐蔭OBの流儀が大きく影響していた。

「(大阪)桐蔭の先輩方がフルスイングで結果を残しているので、いいところをマネしようと思っています。高校時代からも西谷(浩一)監督から『力強いバッティングをしろ』と言われていたので」

 目指す打撃のスタイルは、浅村栄斗(西武)だという。しっかり振り切りながらも、チャンスに強い打撃。大阪桐蔭のDNAを受け継ぐ男が、偉大な先輩たちに追いつき追い越せとばかり、今日も力強くバットを振っている。

 ◆菊地高弘(きくちたかひろ) 1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。プレーヤー視点からの取材をモットーとする。近著に「菊地選手」名義の著書『野球部あるある3』(集英社)がある。

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