ヤクルト連覇へ期待の新戦力 ドラ1原樹“動じない心”貫けるか

[ 2016年1月29日 08:22 ]

新人合同自主トレでブルペン入りしたヤクルト・原樹

 寒風が吹きつけた1月中旬。埼玉県戸田市内の戸田球場でヤクルトの新人合同自主トレが行われていた。鳥原公二チーフスカウトは視線の先にいたドラフト1位右腕・原樹(東洋大)の話題に及ぶと、言葉に力を込めた。「原が2桁勝てば優勝に近づく。それぐらいの力を持っていると思って、うちは1位で指名している」。

 昨季は14年ぶりのリーグ優勝を飾ったが、即戦力と期待された新人にとってはほろ苦い1年になった。ドラフト1位左腕・竹下は左肘痛、左肩痛と故障に苦しみ、1軍登板はなかった。2位右腕・風張もプロ初登板初先発した5月3日の広島戦(神宮)で初回1死後、菊池に頭部死球。わずか8球で危険球退場し、1試合の登板に終わった。昨季2桁勝利をマークしたのは石川、小川の2人のみ。リーグ連覇に向け、先発陣は盤石とは言えない。新戦力の原樹にかかる期待は大きい。

 鳥原チーフスカウトはプロ野球で活躍する選手の共通点として、「動じない心」を挙げる。「例えば、球の力強さが持ち味なのに、結果が出ないと制球を気にしすぎておかしくなる。自分の持ち味は何なのか。周りを気にせず、自分を持っている選手は強いよ」。

 思い出した風景があった。昨年7月。小雨が降りしきるDeNA戦(神宮)の練習前だった。神宮室内練習場に隣接するグラウンドでヤクルトのナインが練習を終えて次々と引き上げていく。DeNAの選手たちが現れてウォーミングアップを行っている時、すぐ隣で小川が表情を変えずに約50メートルの距離のダッシュを黙々と繰り返していた。 その光景を見ていたDeNA・中畑清前監督は「本当によく走る。うちの選手が練習している時に、小川はまったく気にせず、一人で走り込んでいるだろ。野球に取り組む姿勢だよ。うちの投手たちも勉強になる」と感心していた。

 原樹の特性は相手打者を見て打ち取る洞察力。「ブルペンでは見栄えしないと思う。実戦で相手打者を見て、スライダーの曲がり幅を変えたり、シュートの軌道を変えたりします」と自己分析する。問題は自分の持ち味を見失わないで貫けるか。先輩の小川は良きお手本だ。真中監督は「春季キャンプに入れば、ブルペンで周りの先輩たちが凄い球を投げる。そこで焦らず開幕に合わせて調整してほしい」と話す。シーズンは長い。1年間戦うプロ野球では打ち込まれる試合もある。原樹が動じない心で1年を通じて活躍できるかが、チームの命運を握る。(平尾 類)

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2016年1月29日のニュース