日本野球を世界に…清水直行氏の挑戦 道は険しくも尽きない情熱

[ 2016年1月12日 08:27 ]

清水直行氏

 私財を投げ打って…は決して大げさではない。その覚悟を持って野球普及に努めているのが、元ロッテの投手で、現在ニュージーランド野球連盟のGM補佐を務める清水直行氏(39)だ。

 「(ニュージーランドの都市)オークランドにある政府観光局から援助をいただいている。正直言って収入と言えるものではないですけど。でも、今は少しでも野球の普及に自分がやれることはないかを考えています」

 昨年1月から生活の拠点をニュージーランドに移した。12年に行われた第3回WBCの予選でニュージーランドの選手を見て、体格の大きさと可能性を感じ、同国に興味を持った。今年は将来に向け、永住権を獲得する準備も始めた。

 今年7月に福島県で行われるU―15(15歳以下)のワールドカップで代表監督を務めることが決まった。だが、普及の道は険しい。世界トップの実力を誇るラグビーのない夏の時期に野球をする少年が多い。昨年11月からトライアウトを行い、代表選手を自分の目で見て選出したが「移民国家なので、両親がともにニュージーランドという家族も少ない。家族旅行で練習に来ない時があるし、ラグビーを優先する選手とのすみわけもある」。代表練習日を設定しても、全員が集まれる環境にはないという。

 さらに、同国では全国大会と言える大会は年に1度しかなく、プロリーグは存在しない。野球で上を目指すならば、オーストラリアや米国と国外へ飛び出すしかない。昨年から務めるトップチームの代表選手も、すべて海外拠点の選手だ。

 それでも、情熱は尽きない。7月の大会では、少年たちの渡航費を含め資金援助してくれる企業も探していく。「大会で日本とぜひ対戦したいですね。野球をやれば、違う国に行って試合ができることを知ってもらいたい」と話す。

 熊崎勝彦コミッショナーは「日本の野球を世界に広く知ってもらい、世界の野球普及に貢献すること」を語る。だが、現状では、同時にいくつもの国へ普及プロジェクトを遂行することはできない。人にも資金力にも限界はあり、清水氏への全面的なバックアップには至っていない。

 大リーグは元スカウトであったり、元選手が世界各国に散らばり、代表監督やコーチになっている。世界に飛び出した球界出身者をどう支援していくか。清水氏の挑戦を成功例に導くことができれば、世界の目も日本に向き、日本野球の世界普及への大きな道しるべになると思うのだが。(倉橋 憲史)

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2016年1月12日のニュース