各企業がラブコール!野球人、その後の人生はどう歩む?

[ 2016年1月7日 08:01 ]

華やかな舞台で活躍出る選手はひと握り。野球選手の世界は厳しい

 プロ野球界は3月下旬の開幕を控え、各選手とも自主トレに入りつつある。その中で、球界を去らなければならなくなった選手たちはどうしているのだろうか。

 「4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史」の著者で野球に詳しいライターの村瀬秀信さんに聞くと、「一昔前のプロ野球選手の平均寿命は約9年と言われてきた。しかし、最近は今季引退した山本昌投手(中日)ら、ひとにぎりのスター選手の選手寿命が劇的に伸びた一方で、育成枠ができるなどの変化で若い選手の見切りが早くなっている傾向がある」という。

 最近では高卒、大卒に関係なく1~2年で解雇されてしまう選手も珍しくない。今秋、プロ野球12球団で現役引退、退団、戦力外通告を受けた選手は約200人(外国人選手、育成選手を含む)。そのなかでFAやトライアウトなどで現役続行できるのものはひと握りだ。また、キャリア、実績、人気もある有名一流選手は、監督やコーチなどとして現場に残ることができ、その他球団職員、野球関連の職に就ける選手は半数ほど。シーズン中の地上波放送が減少したこともあり、花形選手の代名詞である解説者も「食える職業ではなくなった」と村瀬さん。では、それ以外の選手はどんな職に就くのだろうか。

 「やはりプロ野球は国民的なプロスポーツということもあり、営業として欲しがる会社が多いと聞きます。ひと昔前は歩合の幅が大きい生命保険の営業が人気で、元大洋の市川和正捕手がソニー生命の営業マンとして日本一になったこともありました。また、埼玉で讃岐うどん店を開いた元巨人・條辺剛投手のように飲食店を開業したり、家業を継ぐケースも。元西武のG.G.佐藤外野手は実家の測量会社に、父が福岡・宗像大社の神主、兄が大宰府天満宮の神主である元日本ハムの神島崇投手は引退後に神職に、中日の清水清人捕手は島根の大田市で祖父、父と家業にしてきた漁師をしています」(村瀬さん)

 プロを引退してもアマチュアの指導者になることができたり、あるいは社会人野球に活躍の場を移して“現役続行”となれば幸運だが、実績が残せなかった選手が引退したあとは厳しい道となる。野球だけに人生を捧げ、他のことはほぼやってこなかったケースが圧倒的に多いからだ。一般常識はもちろん、ビジネスマナーを一から叩き込むことになる。とはいえ、体育会系に籍を置き礼儀もしつけもしっかりしていて、ひとつのことに打ち込める粘り強さは、企業にとっては欲しい人材であるという。

 「以前、ある第二の人生を成功している選手に“僕らはプロ野球選手”というどんな国家資格よりも難しいライセンスを持っている。これを上手く使いこなせばどんなことでもできる、という話を聞き、膝を打った覚えがあります。プロ野球選手の第二の人生は暗いというイメージがありますが、しっかり道筋をつけてあげれば、元プロ野球選手の生きる道はものすごくあると思います」(村瀬さん)

 プロ・アマ、性別を問わず、「野球人」への就職コンサルや企業の紹介を提供する「野球の力」(株式会社J.C.O.S)の広報 大竹雅子さんは、企業が求める野球人の魅力についてこう語る。

 「当社には“野球人が欲しい”という企業の登録が300社、実績は90社強あります。野球はどんな強打者でも、10回の打席のうち、7回は失敗するわけです。そういう緊張を持続した状況下で常にチャンスを狙い、前に前に進む気持ち、強くなるために孤独に耐え地道に練習を重ねる姿勢、個々の力を発揮してひたすらチームに貢献しようとする意識など、野球独特の世界の中で育まれ、良い意味で染み付いているものは大きな強みだと思います」。

 「野球の力」は、元ヤクルトの城友博外野手、元巨人の土本恭平投手がキャリアコンサルタントを務め、野球人への企業の紹介を無償で行っている。主な登録者は、幼少期から野球に打ち込んできた約2万5000人もの大学野球部の学生。野球部所属の学生のうち、1~2%しかプロになれず、その中でも野球で十分な生計を立てていけるのはさらに限られた選手、という現状が背景にある。

 「城と土本が、大学硬式野球部の監督と直に関係性を築いているところから、関東圏の約7割、60強の強豪硬式野球部で学生の啓発セミナーや、野球部生限定の就活イベントを行っています。登録者は、毎年700人前後で、9割以上が内定を取得。内定辞退率は5%前後、離職率は8%前後と、一般的な数字に比べ、半分以下の高い定着率があります」と大竹さんは、太鼓判を押す。

 「元プロの方のセカンドキャリアの支援も積極的に行いたい」という姿勢で「野球の技術だけではない、社会でも必ず役にたつ野球でこそ培った能力、人間性」に誇りを持って、新たな社会で輝いてほしいと心から願っております」と語った。

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2016年1月7日のニュース