さらば球界の名士 盛田幸妃氏、大豊泰昭氏…球界支えた名選手ら逝く

[ 2015年12月30日 10:30 ]

99年10月、脳腫瘍の摘出手術を経て421日ぶりに1軍マウンドに上がった盛田幸妃さん

 15年シーズンは、ソフトバンクの2年連続日本一で幕を下ろした。観客増など盛り上がりを見せた一方で、今年もプロ、アマ球界を支えてきた関係者の訃報が多く飛び込んできた。

 ≪盛田幸妃さん 奇跡のリリーバーも…≫「奇跡のリリーバー」は45歳の若さでこの世を去った。盛田幸妃さんはシュートを武器に活躍。しかし横浜から近鉄に移籍した98年、脳腫瘍が見つかった。手術、リハビリを経て01年にはカムバック賞を受賞。しかし36歳で脳腫瘍が再発し、今年に入ってからがんが全身に転移していたという。自身のブログには「毎年が病気の心配と戦い…今も悪戦苦闘の毎日」などと書き込んでいたが、昨年4月を最後に更新されなかった。

 ≪大豊泰昭さん 王氏に憧れ一本足打法≫大豊泰昭さんは、母国・台湾の英雄・王貞治氏に憧れて海を渡った。一本足打法で94年に38本塁打、107打点で2冠王。引退後の09年3月に白血病と診断されたが「同じ病に苦しむ患者さんの希望になりたい」と、自ら開店した中華料理店の店頭に立ち続けた。13年に白血病が再々発。歩行も困難な状態となっていた。それでも「大豊の生命力にかけて、必ず復活します」と語っていたという。

 ≪富田勝さん 「法大三羽がらす」≫田淵幸一(本紙評論家)、山本浩二両氏とともに「法大三羽がらす」と呼ばれた富田勝さん。法大では屈指の三塁手として活躍。東京六大学野球の黄金期を支えた。田淵氏は「親友だったし、思い出はたくさんありすぎる。今でもちょっと目をつぶれば、いろんなことを思い出すんだ」。プロでは南海、巨人など4球団でプレー。中日時代の81年には8月26日の巨人戦で本塁打を放ち、史上2人目となる全球団からの本塁打を記録した。

 ≪松原徹さん 「選手会」事務局長≫松原徹さんは、日本プロ野球選手会事務局長として選手の地位向上などに尽力した。ロッテの球団職員を経て、00年4月から事務局長に。04年の球界再編問題では、史上初のストライキで球界の縮小再編を食い止めた。さらに代理人制度導入やFA制度改革…。プロアマの関係改善では、元プロ選手が短期間の研修で高校の指導者資格を得られるようになるなど、歴史的な雪解けにつなげた。選手会長を務める嶋(楽天)は「自分の体調より、野球界の発展のため、毎日毎日、取り組んでいた。ゆっくり休んでいただきたい」と早すぎる死を悼んだ。

 ≪石井連蔵さん 「伝説の早慶6連戦」指揮≫長きにわたって早大監督を務めた石井連蔵さんは、計13年間で4度のリーグ優勝。語り草は60年秋の「伝説の早慶6連戦」だ。2勝1敗で勝ち点を挙げ、そのまま慶大との優勝決定戦に突入。2試合連続引き分けの末に6試合目を制した。神宮は6戦全て満員。石井さんはのちに「日本中が注目し、私自身も野球の基礎を勉強させていただいた」と振り返った。厳しい練習から「鬼の連蔵」とも呼ばれ、近藤昭仁、仁志敏久ら数多くのプロ選手を育てた。

 ≪ヨギ・ベラさん ヤンキース永久欠番≫伝説の捕手だった。ヨギ・ベラさんは46年にヤンキースでデビュー。シーズンMVPに3度輝いた。ワールドシリーズ制覇はメジャー史上最多の10度。72年に野球殿堂入りし、背番号8はヤ軍の永久欠番となっている。ユーモアあふれる発言は「ヨギイズム」とも呼ばれた。11月には、米国の文民最高位の「大統領自由勲章」をオバマ大統領から授与された。

【さらば球界の名士】

 ▼1月15日 荒井 隆人(享年59 日本野球機構前記録部長)虚血性心疾患
 ▼同13日 加地 隆雄(享年74 横浜元球団社長)心室細動
 ▼同18日 大豊 泰昭(本名陳大豊(チンタイホウ)、享年51 元中日、阪神内野手)急性骨髄性白血病
 ▼同 岩下 守道(享年83 元巨人、国鉄、近鉄内野手)肺炎
 ▼同21日 井本 隆(享年64 元近鉄、ヤクルト投手)すい臓がん
 ▼同23日 アーニー・バンクス(享年83 元カブス内野手)
 ▼2月18日 小橋 洋(享年74 市尼崎野球部元監督)原発不明がん
 ▼同22日 松橋 義喜(享年81 元阪急、国鉄選手。セ・リーグ審判員)敗血症
 ▼同 石丸 徹(享年80 全日本実業団野球連盟名誉会長)肺がん
 ▼4月1日 渡辺(旧姓・安原)達佳(享年79 元巨人投手、外野手)
 ▼同2日 西村 俊二(享年67 元近鉄選手、オリックススカウト)
 ▼5月10日 藤高(旧姓・田原)康行(享年79 元阪急投手)悪性リンパ腫
 ▼同22日 宮崎 剛(享年96 元大洋監督)老衰
 ▼同23日 山本 良材(享年64 元阪急投手)すい臓がん
 ▼同26日 富田 勝(享年68 元南海、巨人、日本ハム、中日内野手)肺がん
 ▼6月15日 切通 猛(享年71 元阪急、阪神外野手)
 ▼7月8日 宮脇 敏(享年63 元ロッテ、広島投手。広島2軍大野寮長)
 ▼同 白坂 長栄(享年92 元阪神内野手、阪神2軍監督、スカウト)
 ▼同14日 高橋 一三(享年69 元巨人、日本ハム投手、巨人コーチ、山梨学院大監督)多臓器不全
 ▼8月3日 西村 貞朗(享年80 元西鉄投手)肝臓がん
 ▼同5日 竹内 秀夫(享年60 前慶大監督)
 ▼同15日 伊藤 菊雄(享年79 元巨人スカウト部長)心不全
 ▼同28日 小林 昭仁(享年86 元駒大監督)
 ▼9月7日 備前(旧姓・大田垣)喜夫(享年81 元広島投手、2軍監督、チーフスカウト)肺炎
 ▼同20日 松原 徹(享年58 日本プロ野球選手会事務局長)ぼうこうがん
 ▼同22日 ヨギ・ベラ(享年90 元ヤンキース捕手)老衰
 ▼同 小寺 好雄(享年79 元巨人外野手)くも膜下出血
 ▼同23日 中村 勝広(享年66 元阪神内野手、阪神、オリックス監督。阪神ゼネラルマネジャー)脳出血
 ▼同27日 石井 連蔵(享年83 元早大監督)
 ▼10月16日 盛田 幸妃(享年45 元大洋・横浜、近鉄投手)
 ▼同30日 吉成 昭三(享年70 元巨人投手)急性大動脈解離
 ▼11月9日 トミー・ハンソン(享年29 元ブレーブス投手)臓器不全
 ▼同10日 安井 鍵太郎(享年97 元南海、阪急内野手)肺炎
 ▼12月27日 デーブ・ヘンダーソン(享年57 元アスレチックス外野手)心臓発作
 =敬称略=

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