中村勝広氏 今季阪神V遠のいたその日に…巨人に負けて流した悔し涙

[ 2015年12月30日 11:00 ]

中村勝広氏

 15年シーズンは、ソフトバンクの2年連続日本一で幕を下ろした。観客増など盛り上がりを見せた一方で、今年もプロ、アマ球界を支えてきた関係者の訃報が多く飛び込んできた。シーズン中の9月には、阪神のゼネラルマネジャー(GM)の中村勝広さん(享年66)が遠征先の都内のホテルで急死。チームの優勝を願ったまま天国に旅立った。

 今月10日、故中村勝広さんの妻・喜子さんから携帯メールが届いた。11月19日、甲子園球場でのお別れの会で参列者に配布したスポニチ「追悼新聞」へのお礼だった。

 初めてのメール。なぜ急に……。理由が分かる気がした。新聞で中村さんの生涯をたどった際に気づいたことだ。

 「奥様、きょうは結婚記念日でいらっしゃいますね」と返信した。2人は1973年(昭48)に結婚。42度目の記念日だった。高校2年から交際を始め50年。半世紀をともに歩んできた。そして、この日は阪神球団の創設記念日でもあり、満80歳を迎えていた。

 「タイガースが生まれた日なんですか?」と再返信の文章が少し弾んでいた。阪神に身をささげた夫を「ともに戦う同志」と呼んだ妻である。記念日の一致を驚き喜んだ。

 90~95年と今も阪神で最長の6シーズン監督を務め、12年からは阪神では初のGMとして激務をこなしてきた。

 東京のホテルで脳出血で他界したのは9月23日午前3時と推定される。前日22日、巨人戦(東京ドーム)に敗れ、優勝の可能性がほぼ消えた。その夜、夫は妻への電話で「初めて悔し涙がこぼれた」と打ち明けていた。

 現役GMの急死は衝撃的で「同志」の妻は悲しみの淵をさまよう。最近になり「阪神監督、GMの妻として恥ずかしくない生き方をしよう」と思えるようになったと聞いた。(内田 雅也)

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2015年12月30日のニュース