温かくて優しいDeNAファンも時には…興味深い鶴岡の心構え

[ 2015年12月28日 11:00 ]

7月21日のDeNA―ヤクルト戦、9回のヤクルト11得点と22安打を表示したスコアボード

 球場で応援する観客のスタイルは十人十色だ。スタンドから過激なヤジが飛ぶことが珍しくない球団もあれば、投手が3ボールにしてカウントが不利な状況になると、観客が拍手で励ます日本ハムのような球団もある。

 DeNAファンは温かくて優しいと個人的に感じている。13~15年の3年間担当記者で携わったが、負けが込んでいてもヤジが飛ぶことは少なく、「次の試合は頑張れよ!」と激励の声援が飛ぶ。今季まで4年間指揮を執った中畑清前監督も「東京ドームで大人数の巨人ファンに負けない迫力の声援だった。雨の日も最後まで席を立たず応援してくれる。何度も涙が出そうになった」と感謝の思いを口にしていた。

 だからこそ、鮮明に記憶に残っている試合があった。本拠地の横浜スタジアムで行われた7月21日のヤクルト戦。3―6で迎えた9回に救援の林と福地が打ち込まれ、12年9月30日以来の1イニング11失点を喫した。「事件」はヤクルトの山田が打席に入った時に起こった。右翼席に陣取る一部のDeNAファンが「やまーだてつと!」の大合唱。本拠地の異様な雰囲気に、守備についていた選手たちが驚いた顔で何度も後ろを振り返っていた。

 屈辱的な大量失点に怒りを抑えきれず、対戦相手の山田を応援したファンは一部にすぎない。一方で、この日は後半戦2試合目。前半戦首位の快進撃で奮闘しただけに、「まさかヤクルトの応援をするとは思わなかった。ふがいない試合で気持ちは分かるけど…」とショックを受けた選手がいたのも事実だった。

 不快な罵声に気持ちの折り合いをどうつけるか。かつてDeNAに在籍し、現在は阪神でプレーする鶴岡の心構えが興味深かった。今年9月のDeNA戦(甲子園)。捕逸し、その後にも投球練習中に後ろにそらすと「しっかり捕らんかい!」、「捕手代えろ!」と阪神ファンからヤジの集中砲火が飛んだ。足がすくんでもおかしくない状況だが、巨人と阪神で日本シリーズに出場したベテラン捕手は修羅場をくぐり抜けた経験値が違う。「気にしていたら身がもたへん。たまに言い返す時もあるよ。でも、ファンも人間やし、応援してくれてるからええんちゃう」とたくましかった。

 今季の横浜スタジアムで満員御礼は球団史上最多の43度。ラミレス新監督を迎える来季は、スタンドに足を運ぶファンの要求も高くなる。連敗が続けば、今年以上にヤジが飛ぶかもしれない。それは勝ちに飢えたファンの期待の裏返しとも言える。DeNAは個々の選手の能力は高い。「外的要因」に左右されない強い精神力を身につければ、優勝争いを繰り広げても決して不思議ではないと思う。(平尾 類)

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