震災から4年9カ月…球児支える両親「仮設プレハブ居酒屋」で笑顔の場提供

[ 2015年12月16日 08:44 ]

居酒屋「十五番」を経営する萩島剛寿さん、具美さん夫婦

復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年

 陸前高田市役所に近い、高田町栃ケ沢地区に建設中の災害公営住宅。市内最大の301戸数を予定し、来年夏頃の完成を目指している。そのすぐ脇にあるプレハブ建ての店舗、午後5時にのれんをくぐると、居酒屋「十五番」の店主・萩島剛寿さん(51)が柔和な笑顔で待っている。

 「掛布(雅之、現阪神2軍監督)が好きでね。震災前、優勝がかかった時はお客さんが集まって。金本(知憲、現阪神監督)のサインもあったんだけど流されちゃった」。仮設店舗での再開は2013年12月24日。それから2年、市民の息抜きの場としてそこにある。

 駅前の飲食店街にあった店は跡形もなくなり、一時は内陸の金ケ崎町に避難。仮設住宅の完成を機に戻ったが「もう店をやる気力はなかった」。

 しばらくして、常連客からの「寂しい」の声を聞いた。震災から6カ月後に芽生えた、再開への思い。場所探しや資金繰りに奮闘した。「相談された時は“嫌だな”と思ったの。だって忙しいでしょ?でも、決めたら曲げない人だから」と、厨房(ちゅうぼう)担当の妻・具美(ともみ)さん(45)が笑う。息子・大寿(だいじゅ)は現在、高田高校野球部の1年生。夜は1人で過ごす。それでも「小さい頃から両親は店にいるのは当たり前。(飼い猫の)トラがいるから。寂しくないです」と明るい。

 今後に不安がない、と言えばうそになる。「今は建設業者さんが滞在してお客さんとして来てくれるけど、復興したら市民だけ。その時にどうなるか」。経営者としての葛藤。「でもね、店にいる以外の自分は想像できないなあ」。萩島さんの奮闘は続く。
 (金子 しのぶ)

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2015年12月16日のニュース