マー君とマエケンの抜きつ抜かれつの野球人生 メジャーで初の投げ合い実現か

[ 2015年12月16日 08:05 ]

13年のWBCに日本代表メンバーとして共に戦った田中(左)と前田健。来季メジャーで投げ合いが実現するか注目だ

 日本の野球ファンなら、誰もが見てみたいだろう。本人たちも投げ合う日を待ち望んでいる。ヤンキースの田中将大と、広島からポスティングシステムでメジャー移籍を目指す前田健太のことだ。ともに1988年生まれで、自他ともに認めるライバル。日本では13年の球宴第1戦で初対決したが、公式戦では一度も投げ合うことはなかった。前田健がメジャー挑戦を決めたことで、実現する可能性が出てきた。

 2人が2年前に対談した際、「投げ合ってみたいか」と尋ねたことがある。投手が実際に対戦するのは打者。投げ合いに関心を示さないケースも多いが、2人の関係は特別だ。声のトーンが上がったことを思い出す。

 田中「思っていますよ。もう、そこは勝ち負けを度外視して、本当に投げ合いたいですね。

 前田健「もちろん勝つのがベストですけど、本当に投げ合いたいというか、投手戦ができればベストですね。そのためには僕が頑張らないといけない。将大は簡単に抑えてくると思うので。

 予想スコアも聞いた。

 前田健「0―2で負け」。

 田中「何を言うとんねん(笑い)」。

 このやりとりは、田中がメジャー移籍を決めた時期。投げ合う舞台は、その時からメジャーが念頭にあった。2年が経ち、前田健も海を渡る。

 「抜きつ抜かれつ」――。ライバル関係を、2人はそう表現する。

 出会いは中学時代。同じ関西のボーイズリーグでプレーし、練習試合でも度々対戦していた。ただ、宝塚ボーイズの田中は当時、捕手だった。忠岡ボーイズの前田健は中学日本代表のエースで、世界大会では優勝してMVPにもなっていた。3年夏に大阪で行われた全国大会。出場していなかった田中は、前田健が投げている試合で「ボールボーイ」を務め、せん望の眼差しで見ていた。

 高校でも名門のPL学園に進学した前田健は1年からエースを務め、夏の甲子園に出場。田中が進学した駒大苫小牧も出場し、初優勝を果たした。ただ、田中はベンチ入りメンバーでもなく、前田健が投げている試合を兵庫県にある実家でテレビ観戦していたという。

 「将大の先をいっていたのはそこまでやったな」。前田健がそう振り返るように、立場が逆転する。高校進学後に投手になっていた田中は、大会連覇を果たした2年夏の甲子園で優勝投手になった。3年夏の甲子園では準優勝。決勝での早実・斎藤佑樹(現日本ハム)との投げ合いについては言うまでもない。

 ともにドラフト1位でプロ入り。田中は1年目から11勝を挙げ、新人王を獲得した。前田健も徐々に頭角を現し、プロ4年目の10年には田中よりも先に沢村賞を獲得した。13年のWBCでは、当初はエース格だった田中が不振に陥り、最終的には前田健がエース格になっていた。田中は「沢村賞もそうだし、結局、(13年WBCでの)侍ジャパンでも先に行かれて、ベストナインに選ばれて。僕は何もしてませんからね」と振り返る。

 その13年、田中は開幕から無傷の24連勝で楽天を初の日本一に導き、海を渡った。メジャーでも2年連続2桁勝利(13勝、12勝)。故障に苦しみながらも、結果を残して名門・ヤンキースのエースになっている。前田健も、ライバルの後を追うように海を渡る。

 前田健の移籍先次第では、田中と日米通じて初めて公式戦で初対決する機会が訪れるかもしれない。世界最高峰のメジャーの舞台で、日本人投手のハイレベルな投げ合い。そんな日を待ち望んでいる。(飯塚 荒太)

 

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