巨人・田原啓、育成から支配下登録目指す左腕の覚悟とは…

[ 2015年11月27日 08:50 ]

支配下登録を目指す巨人・田原啓

 4年ぶりに行われた巨人の宮崎秋季キャンプ。29人の参加選手の中で、ひと際瞳をギラつかせている選手がいた。育成選手として唯一、メンバー入りした左腕の田原啓だ。連日、死にものぐるいで腕を振っていた。

 「支配下登録を勝ち取る」。強い覚悟が全身から漂っていた。

 横浜高から12年育成ドラフト1位で入団。3年目の今季は、8月5日のイースタン・リーグ、ロッテ戦(東京ドーム)で先発初勝利を飾るなど、5試合で1勝1敗、防御率4・30。10月のフェニックス・リーグでは3試合に先発し、2勝0敗、防御率1・00と好成績を残し、秋季キャンプの参加選手に抜てきされた。

 第2クール初日の12日にはブルペンで「野球人生で最多」という250球を投げ込んだ。投げ終えた時には、投球を受けたブルペン捕手が疲れ切っていた。第1クールにも230球を投げ込んでいたが、「そんなに疲れなかった。150球のつもりだったけど、気付いたら250球になっていた」と涼しい表情で振り返った。すべてのクールで「200球超え」を敢行し、キャンプの合計球数はただ一人、1000球を軽々と上回った。

 ただ、やみくもに投げ込んだわけではない。意識したのは、力みのないフォームから「リリースの瞬間に100%の力を出す」。直球の切れと精度の向上がテーマだった。自らの課題と真摯に向き合い、克服することに集中した結果、自然と球数は増えていた。「誰よりも一番アピールしないといけない。とにかく自分の存在を出していきたかった。支配下を目指して、1軍のマウンドに立てたらいいな、と思う」。視界にはっきりと捉えた夢の舞台が、何よりのモチベーションだった。

 その熱を帯びた姿は、1軍首脳陣の目にも留まっていた。高橋新監督は「だいぶ投げているみたいだね。彼も支配下登録に向けて勝負どころでしょうし、頑張ってほしい」とさらなる奮起を期待した。

 田原啓は今オフ、中学や高校時代の同級生とともに自主トレを行う予定だ。「(支配下登録は)キャンプに行ったからなれるとか思うのは良くない。“なるんだ”、という強い気持ちでやりたい」。結果を出さなければ生き残れないプロの世界。大きなチャンスをつかみかけた左腕は、野球人生をかけた勝負の冬を迎える。(青木 貴紀)

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2015年11月27日のニュース