西武戦力外 田中が見せた「神対応」 来年はロッテで…

[ 2015年11月24日 08:20 ]

西武時代の田中靖洋投手

 そんじょそこらのアイドルにも負けない「神対応」だった。11月10日、静岡・草薙球場。12球団合同トライアウトを取材した。自身の登板を終えた投手は、次々と会場を後にする。西武を戦力外となった田中靖洋投手もそこにいた。球場を出て1人、駐車場へと歩く。たまたま一対一で取材していた。その時だ。ファンから声を掛けられた。

 「サイン、いただけますか?」「背番号も入れてもらっていいですか?」。10人ほどいただろうか。差し出されたのは、西武時代の野球カード。プロ入りから10年間を過ごしたが、選手としてはおそらく2度と着ないであろうユニホーム姿だ。厳しい現実。心中は複雑だったに違いない。トライアウト直後。果たしてどこかの球団から声が掛かるのか…。来季以降の身の処し方も分からない。不安でいっぱいだったろう。しかし、田中は嫌な顔もせず、丁寧にサインに応じた。

 トライアウトでは参加選手中、最速となる147キロをマーク。これで終わりじゃない、との思いは強かったはずだ。自分はまだ、プロ野球選手。サインをする姿からは、そんなプライドが伝わってきた。「緊張して吐きそうだった。でも、スピードに関してはアピールできたと思う」。田中はそう話して、帰りの車に乗り込んだ。

 実は裏話がある。9月12日の日本ハム戦(西武プリンス)で、田中は入団10年目にしてプロ初勝利。順位争いが佳境の9月だけで5試合に登板した。最終的に、来季の戦力構想から外れたと発表されたのが10月27日。その間、球団側は他球団にトレードでの移籍を打診していたという。西武では構想外となってしまったが、何とかプロの世界で、環境を変えて野球人生を続けられないか。しかし、結局トレードはまとまらず、戦力外=自由契約となってしまった。

 田中は17日からロッテの鴨川秋季キャンプに参加。入団テストを受けた。紅白戦で直球は147キロを計測。くしくも、トライアウトでの投球と同じ数字だった。今、持てる力を、精いっぱいに…。ロッテはかつて兄・良平さんも所属したチームだ。テストの結果、田中の入団は確実だという。

 今度は、胸に「Marines」と書かれたユニホーム姿の野球カードにサインを――。そんな日は、すぐにでもやってくる。(鈴木 勝巳)

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