工藤監督 独自の練習理論 根性より厳しい練習をさせる科学の目

[ 2015年11月24日 09:40 ]

ソフトバンク・工藤監督

 ソフトバンクの工藤監督が言った忘れられない言葉がある。「科学と根性」だ。科学的なトレーニングが「量より質」なら、根性で乗り切る練習はその逆というイメージがあった。だが、工藤監督は「トレーニングは“科学”と“根性”がある。どちらがきついか。科学の方がきつい」と言い切った。

 工藤監督が西武に入団した82年当時、200メートルを50本走らされたという。想像を絶する量の走り込み。倒れそうになりながら、根性で走りきった。ところが、30歳のときにトレーナーが組んだ走り込みのメニューは「200メートル走×70本」だったという。「なぜトレーナーが走らせたか。それは走り方が悪くなかったから。“根性”より厳しい練習をさせるのが“科学”なんだ」と言う。フォームが崩れていないからケガの心配もなく、まだ走れると判断して練習させるのが科学の目。必ずしも「科学=量より質」ではなかった。

 練習量をこなさなければ身につかない技術もある。「大毎ミサイル打線」の主軸を打ち通算2314安打をマークした榎本喜八氏について書いた「打撃の神髄 榎本喜八伝」(松井浩著、講談社)が好きで何度も読んでいるが、榎本氏は本の中で次のように高校時代を振り返っている。

 「早実の厳しい練習でクタクタになって帰宅するでしょ。でも、素振りをしないと落ち着いて寝られないから、五○○も六○○も素振りをする。どうしたって手抜きしたくなるんだけど、それでも“プロ野球選手になるんだ”と思って必死でバットを振ってたら、ある時、フッとバットを軽く感じたことがあったの。それが、背中を亀の甲羅のように丸めて構えて、グリップを左肩より高い位置においたときだったんです。スッと両脇が締まって、バットが軽く感じられた」

 脇を締めようと意識すると肩に力が入るが、背中を丸めて肩甲骨を左右に広げれば肩の力は抜けて脇も締まる。疲れている中で自然と身についた合理的、科学的な構えだ。

 ソフトバンクは10月30日から11月20日まで宮崎で秋季キャンプを行った。日本シリーズ後に1日休んだだけで宮崎入りした工藤監督は、若手に3時間を超える筋力トレーニングを伝授。3年連続日本一を狙う選手たちは、48歳まで現役を続け大学院でスポーツ医学を学ぶ指揮官の「科学的な地獄トレ」に取り組んだ。(渡辺 剛太)

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2015年11月24日のニュース