野球賭博問題で晩秋の出処進退。そして巨人前GMは無職となった

[ 2015年11月19日 08:00 ]

巨人前GMの原沢氏

 責任の取り方は難しい。そして人それぞれだ。巨人の野球賭博問題。監督、コーチを含めれば、ユニホームを着て試合に携わるのは1球団で100人前後。特に選手は個人事業主であり、その隅々までモラルの徹底を図るのは極めて困難だ。だから、私見としては関与した3投手の無期失格処分は当然にしても、球団幹部が全ての監督責任を負わされるのは同情を禁じ得ない。

 その中で9日付で引責辞任したのが原沢敦球団代表(59)だった。世間的にはあまり知られていないが、原沢氏は昨年に読売新聞本社を退職しており、球団代表を辞任したことで失職し、全くの「無職」となった。「球団にはどんなポストであっても残らず、職に就かないことでケジメをつけたい」と話したという。すぐさま路頭に迷うわけではないだろうが、その胸中やいかに。上智大文学部卒の原沢氏は読売新聞社に入社後、広報部次長、社会部次長などを経て、2000年に巨人軍法務室次長に就任。06年に取締役、11年にかの清武英利元代表の後任として常務取締役球団代表、GM兼編成本部長に就いた。

 そして今年5月。GM兼編成本部長の職を突如解かれた。開幕から1カ月余で極めて異例の人事だった。その背景にはフロント主導で獲得したフランシスコが戦力にならなかったことがあるとされるが、これも気の毒だった。言うまでもなく、巨人軍のポストは読売新聞グループの重要な天下り先である。GMという専門職かつ重職であっても、親会社の社員に委ねられる。言葉は悪いが、選手、監督出身の中日・落合博満GMらとは対照的に、「サラリーマンGM」の域は出ない。

 それ故に、現場と本社の板挟みによる心労は絶えなかっただろう。球界を揺るがす今回のスキャンダルでも、巨人・久保博社長は「(現場の首脳陣に)分からないような形で賭け事をしていたということから、監督責任の一番重いところは球団代表にある」と言った。再び詰め腹を切らされたという見方がある一方で、原沢氏が“人生の賭け”として最後に自ら決めた出処進退。失った職と引き換えに、やっと「自由」を手に入れたのかもしれない。(東山 貴実)

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2015年11月19日のニュース