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高橋由伸の覚悟と男気 現役への未練断ち切り、巨人監督就任

[ 2015年11月18日 09:00 ]

就任会見を行う巨人・高橋由伸新監督

 「元気があれば、何でもできる」。かつて、アントニオ猪木が言った名言だが、巨人の監督を引き受けた高橋由伸の決断を見て、こう思った。

 「覚悟があれば、何でもできる」

 まだ40歳。天才打者はまだ余力を十分に残していたが、現役への未練を断ち切った。監督要請を受けた時は「僕が覚悟を決めるかどうかじゃないですか」と言った。3日後の就任会見。「球団の方たちも相当の覚悟があってのことだと思いますし、僕自身も覚悟を持って決断しました」と言った。「覚悟」という二文字を何度も使っていた。

 06年から2度目の指揮を執った原辰徳監督が辞任した。以前から次期監督の筆頭候補だった松井秀喜氏に引き受ける意思はない。しかも、スター選手でもあった名将の後釜である。球団からしてみれば、スター選手の高橋由伸に頼るしかなかった。そんな背景を十分に理解し、引退を決断した。広島・黒田をほうふつとさせる「男気」だ。

 この男には自然と人が集まる。物腰が非常に柔らかく、決して偉ぶらないからだ。人の話にもちゃんと耳を傾ける。先輩、後輩問わずだ。指導者としても、きっと頭ごなしに怒ることはしないだろう。記者の質問に対しても考えた上で、答えてくれる。プロで活躍し始めると、記者への対応が変わっていく選手もいるが、高橋由伸は慶大時代から変わらなかった。沖縄での自主トレには何度か取材に行った。外野で球拾いの手伝いをすると、昼にはケータリングの食事を用意してくれた。人の好意に必ず応える。

 今回の監督就任もそうだが、振り返れば、選手会長就任も巡り巡ってきた。02年オフ。FAで海を渡った松井秀喜から引き継いだ。「そういうことだから。あとはよろしく」という言葉を残して。松井秀喜はマイペースで自ら選んだ道を突き進む。一方、高橋由伸は自らの宿命と向き合い、周囲の期待に応える。その結果が巨人ひと筋18年。監督を先にやることになったのも運命だろう。

 昔、同じスラッガーとして松井秀喜を意識しているのか、聞いたことがある。「もちろん、パワーではかなわないですよ」。そう苦笑いした後、涼しい顔でこう続けた。

 「でも飛距離だけじゃないですよ。ホームランはフェンスを越えればホームランですから」。その言葉に思わずうなずいた。これからは、勝敗の責任を背負う立場となる。大差を付けて勝っても、1点差で勝っても、同じ1勝に変わりはない。(飯塚 荒太)

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