「特等席」で感じた駒大・今永&東洋大・原「ドラ1対決」の凄み

[ 2015年11月12日 09:17 ]

ドラフト1位の駒大・今永

 レッドソックスの上原が、巨人時代によく話していた。

 「あの時間は、自分だけの特等席。マウンドから見る、あの景色は最高だからね」

 甲子園での阪神戦。7回裏の阪神の攻撃前に、球場全体から華やかなジェット風船が飛ばされる。上原は、その光景をマウンドで投球練習しながら眺めることが好きだった。だから、甲子園での阪神戦を前に話を聞くと「先発として最低でも7回は投げたい」というコメントを繰り返していた。

 2012年からアマ野球担当になった。東京六大学野球、東都大学野球リーグの舞台となる神宮球場は、バックネット裏に記者席がある。そこでは投手の球筋を間近に見ることができる。150キロのスピードボール、鋭い変化を見せるスライダーやフォークボールも打者目線に近いところから体感できる。ある先輩記者は言った。「ヤクルト戦の取材で神宮の記者席から野球を見ることが好きだったなあ。あそこから野球を見たおかげで、俺もバットに当たるようになったんだよ」。その先輩記者は、バッティングセンターで140キロのスピードボールに目が付いていけるようになったことを喜んでいた。

 11月7日。午後4時から東都1、2部入れ替え戦の1回戦が行われた。1部最下位の駒大と2部優勝の東洋大。DeNAからドラフト1位指名された駒大・今永と、ヤクルト1 位の東洋大・原のドラ1同士の投げ合いを「特等席」から見た。

 結果は、1―0で駒大の勝ち。今永は150球を要しながら、意地の完封だった。アマ担当になって4年間、さまざまな好投手同士の投げ合いに立ち会ってきたが、この日の投手戦は、ベストゲームに挙げられるほどの内容だった。1アウトを取る度に雄叫びが上がった。極端に言えば、1球ごとに気迫が伝わってきた。

 その後、入れ替え戦は2勝1敗で東洋大が勝ち、1部昇格。原は先発、救援、先発の3連投で結果を示した。

 2投手はともにセ・リーグ球団から1位指名を受けた。来年以降も「特等席」から、2人の投げ合いを見たいと思った。(川島 毅洋)

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2015年11月12日のニュース