日本シリーズで悲願の“初登板”…準備が報われた人一倍の努力家

[ 2015年11月10日 08:12 ]

10月28日の日本シリーズ第4戦、3回無死満塁、ソフトバンク・李大浩の適時二塁打で生還した柳田(左)を出迎える工藤監督

 熊本県玉名郡長洲町は人口1万6000人強の小さな町だ。10月28日の日本シリーズ第4戦(神宮)。小学校、中学校と一緒に学んだ同級生が日本シリーズで「初登板」した。これまでペナントレースは何度も経験したベテランのはずだが、悲願の初舞台に緊張の色は隠せない様子だった。

 田舎町の少年からすればプロ野球の世界は夢のまた夢の世界。電車で小一時間かかる熊本市の藤崎台球場で年に1度、巨人戦があるくらい。小学校の近くにあった駄菓子屋で売られていた12球団のマグネットくじが流行り、巨人を引き当てただけでヒーローになれた。これを書きながら当時を振り返ると懐かしい気持ちがあふれてくる。

 彼のことはいまでも当時と同じ愛称「かっちげ」と呼ぶ。あの頃から勉強もできた。野球部では居残りでシャドーピッチングをする姿をよく、見かけたものだ。努力家は大人になっても変わってはいない。「本当、準備が大変なんだ」。前々日の26日は神宮球場であったソフトバンクのナイター練習も偵察しに来た。

 大学進学と同時に上京し、すっかり熊本弁が抜けたのは気に入らないが、活躍は誇りだ。大一番での「全力投球」を見たいと思い、ホークスの担当として知る限りの情報を提供した。昔のよしみというやつだ。ネット裏の記者席からは「活躍」を目にすることはかなわなかったが、数日後、こんなメールが届いた。

 「ありがとう。関東地区では(日本シリーズ)全試合の中で一番いい視聴率だったよ。奇跡です!」。日本シリーズ第4戦(神宮)はフジテレビ系列で中継され日本シリーズ最高の12・5%(ビデオリサーチ社調べ、関東地区)を記録した。実況は福永一茂アナウンサー。あの人一倍の努力家「かっちげ」である。(福浦 健太郎)

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2015年11月10日のニュース