“日本一請負人”工藤監督、徹底ミーティング課し“3連発”山田封じ

[ 2015年10月30日 05:36 ]

<ヤ・ソ>内川も歓喜の輪に加わり工藤監督を胴上げ

SMBC日本シリーズ2015第5戦 ソフトバンク5-0ヤクルト

(10月29日 神宮)
 3勝1敗で王手をかけていたソフトバンクは29日、5―0でヤクルトを下し、2年連続7度目のシリーズ優勝を飾った。日本一連覇は90~92年の西武以来で球団史上初めて。4番の李大浩内野手(33)が4回に先制の左越え2号2ランを放つなど、投打で圧倒。レギュラーシーズンで90勝を挙げた強さをポストシーズンでも見せつけた。就任1年目の工藤公康監督(52)は新人指揮官として10年のロッテ・西村徳文監督以来5年ぶり10人目のシリーズ制覇となった。

 鷹が羽ばたくように背筋を伸ばして、両手を広げた。胴上げは3度目。コツはつかんだ。工藤監督は神宮の夜空へ9度、舞った。優勝請負人。その称号に偽りはなかった。監督就任会見で誓った日本一連覇。その公約を見事達成してみせた。

 「(胴上げは)最高の気分ですよ。選手たちは勝つんだという強い気持ちを持ってやってくれた。僕が選手たちを胴上げしてあげたいくらい」

 選手として日本シリーズに計14度出場。今ではともに戦うソフトバンク・王貞治球団会長と並ぶ歴代1位の記録だ。そのうち、日本一は11度。今度は指揮官として、その数字を「12」へ増やした。選手、監督としても1年目に日本一に輝いた。

 シリーズ前日。23日の練習日に内川の肋骨骨折を知らされた。「え、まじ?」。CSファイナルS3試合で、全て決勝打を放った4番&主将が抜けたのだ。指揮官の心は激しく揺れた。ただ、表情には出さなかった。「僕が動揺する様子を見せると、選手にも移る」。何より工藤監督には、天性の明るさがあった。「いないもんは、しようがないよ」。代役に起用した昨季までの4番・李大浩は2、4戦目で決勝打。そしてこの日また、決勝弾でMVPに輝いた。

 短期決戦のスペシャリストが、シリーズ前に選手へ課したのは徹底したミーティングだ。「先発、リリーフと皆で集まって話し合ってくれ。実戦に生きる」。指揮官自身、第1戦で完封勝利したダイエー時代の99年は、女房役の城島と何十時間にも及ぶ解析作業をした。「(中日の4番)ゴメスは困ったら内角。5分で終わった。最後まで残ったのは関川」。相手はシーズン打率・330。それでも直球と変化球を待つ時に足を上げる動作が違うことを発見し、19打数無安打に封じた。

 第3戦でヤクルト・山田に3打席連発を浴びた翌日。バッテリーに命じ、再び1時間の対策会議をさせた。妥協は許さない。「人間、バカは一人もいない。スーパーコンピューターが頭に入っている。壁があると言うけど、それはダメになった自分への言い訳。努力しない言い訳が壁になるんだ」。第4、5戦と山田を無安打に封じた。グラウンドの外で勝つために割いた時間の「差」が出た。

 厳しく接するだけではなかった。リーグ優勝後、選手、コーチ、裏方全員へ「2015パ・リーグ優勝記念 ○○様 ありがとうございました」とそれぞれの名前が書かれた純米吟醸の日本酒を贈った。軽やかな口当たりの中に、しっかりとした日本酒の味が出ている。工藤野球を象徴するかのような飲み応え。チームが一丸となって、日本一への英気を養った。

 秋山前監督の背番号81を受け継ぎ球団初の2年連続日本一。シリーズ連覇は指揮官自身が主力だった90~92年の西武以来だ。異なる監督による連続日本一は史上初の快挙となった。頂点に立つ喜びを知る男は言った。「一つ勝つことより勝ち続けるのは難しい。周りのチームより、よほどやらないと」。工藤監督に休養は似合わない。31日には秋季キャンプ地の宮崎へ入る。その鋭い眼光はシリーズ3連覇へ向いていた。(福浦 健太郎)

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