衝撃的だった金城の言葉 心待ちにしたい新舞台での“倍返し”

[ 2015年10月30日 08:30 ]

4月15日の古巣DeNA戦の7回2死一、二塁、巨人・金城は決勝右越え3ランを放ちベンチを指さす

 巨人の金城龍彦外野手(39)が先日、今季限りでの引退を発表した。昨オフにフリーエージェント(FA)でDeNAから移籍。巨人担当の私は1年間だけの取材だったが、一心不乱にバットを振り込む姿が目に焼き付いている。そして、忘れられない言葉がある。

 4月15日のDeNA戦で、移籍1号となる決勝3ラン。古巣のファンで埋まる横浜スタジアムの右翼席に値千金の一撃をたたきこみ「良い仕事ができて最高の気分です。使っていただいて感謝しているし、もっと貢献したい」とうれしそうに話していた。しかし、6月に左前腕部を負傷。6月10日の日本ハム戦(札幌ドーム)を最後に1軍での出場はなく、この一発が現役最後のアーチとなった。

 秋季練習初日の10月23日には川崎市のジャイアンツ球場を訪れ、チームメートにあいさつ。その後、引退を決めた経緯を丁寧に明かしてくれた。「今季はリーグ4連覇を目指して戦おうと、戦力として加入させていただき、相当な覚悟をもって臨みました。1日1日が最後という気持ちでやりましたが、けががあり、年齢からくる衰えを感じて、思うようなプレーができなくなったので、ユニホームを脱ぐ決断をしました。現役生活を悔いなくまっとうできました」。吹っ切れた晴れやかな表情が印象的だった。

 6月に2軍落ちして以降も、再昇格だけを見据えて川崎市のジャイアンツ球場で黙々とリハビリに励んでいた。けがが癒えてからは、2軍の若手に交じって居残り特打も敢行。誰もいない室内練習場で、打撃マシン相手に1時間近く打ち込む姿を何度も目撃した。ベテランとは思えないほどエネルギーにあふれていた。もう一度、1軍の舞台で活躍する姿を見たい、と素直に思えた。

 CS開幕直前の10月7日、約4カ月ぶりに1軍に合流。バント練習の球拾いを手伝っていると、こんな言葉をかけてくれた。「本当にありがとう。この恩は必ず返すから。倍返しするよ」。正直、こんな風にありがたい言葉をかけてくれる選手はなかなかいない。それだけに衝撃的だった。結局、出場選手登録されることはなかったが、CS敗退が決まった当日も、ジャイアンツ球場で必死にバットを振っていた。

 10月29日、金城が来季から巨人3軍打撃コーチに就任することが球団から発表された。「良い経験ができたので、今後の人生に生かしていきたい」。そう話していた金城が、指導者として再出発する。00年に打率・346で首位打者と新人王に輝いた男は、どんな強打者を育てるのか。新たなステージでの“倍返し”がとても楽しみだ。(青木 貴紀)

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2015年10月30日のニュース