右投げ左打ち外野手の受難 プロでは飽和状態、スカウト厳しい評価基準

[ 2015年10月22日 11:20 ]

右投げ左打ちでも押し込む力が強い(左から)明大の高山、青学大の吉田、慶大の谷田

 いよいよ22日に開かれるプロ野球ドラフト会議。各球団の予想指名選手が取りざたされるなかで、受難の時を迎えているのが「右投げ左打ちの外野手」だ。

 1990年代にイチロー(マーリンズ)や松井秀喜(元ヤンキースほか)という右投げ左打ちの外野手が出現して以来、アマチュア球界で右投げ左打ちはトレンドになった。右打者よりも一塁ベースへの距離が近く高打率が望めることが、左打者が急増した大きな要因だと思われる。

 しかし近年、プロスカウトに話を聞いていると、「あの選手は右投げ左打ちだからなぁ……」という嘆き混じりの言葉を聞くことが多くなった。特に右投げ左打ちの外野手は敬遠される傾向があり、その理由は「もうチームにいるから」というものがほとんどだ。

 たとえば今季の巨人は外野手が16人おり(育成選手を除く)、両打ちを含めて左打ちは13人もいる。そして、右投げ左打ちは6人(右投げ両打ちも含めれば10人)。よほど打力がある、足が速い、守備が抜群にうまい、といった特徴がなければ、せっかくプロに入っても埋没してしまう。もちろん各球団のチーム事情によって違いはあるが、外野手なら右投げ右打ちのほうが需要は高まっている印象だ。

 また、右投げ左打ちの選手は左投げ左打ちの選手に比べて、「ボールを押し込む力が弱い」という見方をされることもある。利き手が左手である左投げ左打ちの選手がインパクトでボールを強く叩くことができるのに対し、利き手が右手の右投げ左打ちは左手で強く押し込めない選手が多い。ただ、右投げ左打ちの外野手ながら、今年のドラフト上位候補に挙げられている高山俊(明治大)、吉田正尚(青山学院大)、谷田成吾(慶應義塾大)はみな、押し込む力の強い選手たちだ。

 こうした評価基準の厳しさを反映してか、右投げ左打ちの外野手のなかでプロ志望届を提出している選手は意外と少ない。高校生はオコエ瑠偉(関東一高)、大瀧愛斗(花咲徳栄高)、姫野優也(大阪偕星学園高)、青柳昴樹(大阪桐蔭高)という右投げ右打ち外野手がプロ志望届を提出しているが、右投げ左打ちは勝俣翔貴(東海大菅生高)が目立つくらい(ただし、勝俣は主に投手としてプレーしていた)。

 大学生では、小柄ながらパンチ力のある打撃が光る菅野剛士(明治大)、身体能力が高い神里和毅(中央大)、走攻守の総合力がある板山祐太郎(亜細亜大)、東京六大学リーグきっての韋駄天でしぶとい打撃もある重信慎之介(早稲田大)。ソフトバンク・王貞治会長の打撃の師匠である荒川博氏に師事した渡辺勝(東海大)も、特徴的な一本足打法で指名を狙っている。社会人に目を移すと、八戸学院大時代から強肩強打で鳴らした谷恭兵(西濃運輸)が候補に挙がっている。

 今年のドラフト会議が終わった時、はたして何人の右投げ左打ち外野手が指名されているだろうか。12球団最後の指名まで注目していきたい。

 ◆菊地選手(きくちせんしゅ) 1982年生まれ、東京都出身。野球専門誌『野球太郎』編集部員を経て、フリーの編集兼ライターに。プレーヤー視点からの取材をモットーとする。著書『野球部あるある3』(集英社)が8月に発売された。

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