阿部「バット短く、息長く」引退勧告撤回させた“大道魂”体現2打点

[ 2015年10月13日 07:55 ]

バットを短く持つ阿部(左)と大道

セ・リーグCSファーストS第3戦 巨人3-1阪神

(10月12日 東京D)
 崖っ縁を救ったのは4番だった。セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(3試合制)は12日、第3戦が行われ、巨人が阪神を3―1で下し、対戦成績を2勝1敗として4年連続のファイナルステージ出場を決めた。阿部慎之助内野手(36)が初回に先制犠飛、6回にも2点目の右前適時打を放った。リーグ優勝した昨季、ファイナルSで4連敗を喫した阪神に雪辱。14日から、6試合制で行われるファイナルSでリーグ優勝したヤクルトと対戦する。

 試合後、阿部は珍しくナインに自ら歩み寄って称えた原監督と、誰よりも激しくハイタッチを交わした。右手から指揮官の思いが伝わった。

 「やっぱり阪神も粘り強いなと思って、最後までドキドキした。こういうしびれる試合はなかなかない。今季やってきたことを悔いの残らないようにとだけ考えた」

 負ければ今季が終わる崖っ縁の大一番。プロ15年目、数々の修羅場をくぐり抜けてきた大黒柱も極度の重圧に襲われた。1―0の6回1死一、三塁の打席で足が震えた。それでも、岩田が投じた外角低めスライダーに最後は右手一本で食らいついた。打球が一、二塁間を抜けると、走りながら両手を叩いた。「足も震えたけど恥ずかしいとは思ってない。緊張感があったからこそ良い結果が出た」と胸を張った。

 「大道魂」をバットに込めた。CSに入り、確実にミートするためにレギュラーシーズン中よりもバットを指1本分短く握るようにしていたが、この日はさらに1本分短く持った。思い描いたのは、拳2個分も短く握っていた大道典良(現ソフトバンク打撃コーチ)。09年ポストシーズンで代打職人として活躍し、球団が検討していた引退勧告を撤回させた先輩だ。初回1死一、三塁では能見の外角スライダーをすくい上げて先制の中犠飛。「昔、大道さんに“バット短く、息長く”という名言をいただきました。大事な時にそれができて良かった」と「慎之助節」をさく裂させた。

 お立ち台では今季限りで引退する同学年の阪神・関本に敬意を表した。「この場をお借りして本当に19年間お疲れさまです、と言いたい。思い出がたくさんあった選手。凄く寂しい」。関本は「6番・三塁」で先発出場。これまで捕手として何度も戦ってきただけに「一番長く戦ってきた同級生。痛い場面で打たれたり、抑えたり…いろいろあった」と回想した。

 4年連続でCSファイナルS出場を決めた原監督は「技術プラス気持ちが安打(適時打)にしたのかなと。先制も見事だった」と4番を絶賛し、「予定通りの形であさってから試合ができる。思い切っていきたい」と先を見据えた。阿部も「神宮球場で思いっきり暴れたい」とリーグ4連覇を阻んだヤクルトへの雪辱を誓い、4万6067人の大観衆に約束した。

 「また東京ドームに戻ってくるのは日本シリーズしかない。必ず戻ってこれるように頑張ります!」 (青木 貴紀)

 ☆09年の大道 開幕2軍スタートも5月に1軍昇格。主に代打で37試合に出場したが、序盤は不振を極めた。しかし、中日とのCS第2ステージ第2戦(東京ドーム)の4回、チェンからダメ押しの適時二塁打を放つと、日本ハムとの日本シリーズ第5戦(同)では1点を追う8回に右前に同点打を放ち、9回に阿部のサヨナラ本塁打で王手。4勝2敗で7年ぶりの日本一に輝いた。当初、球団は大道に引退勧告する予定だったが、ポストシーズンの貢献度から翻意。41歳シーズンの現役続行が決まった。

 ≪4度目勝利打点 歴代2位タイ≫阿部(巨)が初回の先制犠飛を含む2打点。自身プレーオフ、CSでの勝利打点は11年(1)S第2戦以来4年ぶり4度目。PO、CSの通算最多V打は和田(中)の5度だが、4度は森野(中)と並ぶ歴代2位タイになった。阿部のCSファイナルSの年度別打撃成績を出すと(Vは日本シリーズ出場、×は敗退)

打 率[本]点 相手 
07年・200 0 中日×
09年・273(1)1 中日V
10年・188(1)1 中日×
12年・273 2 中日V
13年・300 2 広島V
14年・125(1)2 阪神×
 打率2割5分以上なら勝ち抜け。2割以下だと敗退とファイナルSでは阿部のバット次第になっている。

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