トリプルスリー、三冠王へ 潜在能力では負けないDeNA2枚看板

[ 2015年10月6日 09:05 ]

DeNAの筒香

 9月下旬のヤクルト戦(神宮)。練習前にストレッチしていたDeNAの主砲・筒香がつぶやいた。「何であんな打てるんですかね…」。視線の先には、フリー打撃で快音を響かせる山田の姿があった。トリプルスリーを達成した1学年下の強打者。他の選手を意識した発言を普段はしないだけに、ふと漏らした言葉に驚かされた。

 昨季5位のDeNA、最下位のヤクルト。ともに下位に沈んだ両チームが今季は明暗を分けた。DeNAは前半戦首位ターンしたが、後半戦に大失速して12年以来3年ぶりの最下位。ヤクルトは強力打線、外国人3人を配置した救援陣が機能して01年以来14年ぶりのリーグ優勝を飾った。

 学年こそ違うが、川端と梶谷が27歳で、筒香と山田は23歳。全員が高卒でプロ入りし、ファームでの下積み時代からしのぎを削ってきた。梶谷は「山田と川端さんは天才だと思う。打撃センスが違う。今年の成績を見ても、素直に“すげぇな”って思いますもん。ゴー(筒香)も天才ですけどね」と話していた。

 2年連続盗塁王を狙う梶谷の前に立ちはだかったのも、山田だった。「タイトルを譲りたくない」と闘争心をむき出しに、両太腿裏が肉離れ寸前で立っているのも辛いシーズン終盤でも、積極果敢に盗塁を狙った。しかし、梶谷は28盗塁で山田の34盗塁に届かず。筒香も打率・317、24本塁打、93打点の好成績だったが、山田が打率・329、38本塁打、100打点。打撃3部門すべてで及ばなかった。

 今季限りで退任した中畑監督が就任4年間で成長に期待を込め、厳しく接してきたのが梶谷、筒香だった。昨オフは梶谷に外野の定位置を保証せず、「盗塁王を獲っても今のままの淡泊な打撃ではダメ。3割30本30盗塁が達成できる素材なのにもったいない。意識を高く持たないと」と苦言。昨年7月にはサイドを刈り上げ、トップだけ残す髪型にした筒香に「小久保(監督)に侍ジャパンの4番を打つ選手だと言っている。そんな人間がこんな髪型はダメだ」と散髪するように命じた。

 個人タイトルを狙う上で川端、山田は常に立ちはだかる高い壁だが、DeNA打線の2枚看板も潜在能力は負けていない。梶谷はリーグトップの得点圏打率・352。筒香も昨年の個人成績をすべて上回り、着実にステップアップしている。同世代のライバルの存在が刺激にならないはずはない。梶谷はトリプルスリー、筒香は三冠王。決して不可能な目標ではないと思う。 (平尾 類)

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2015年10月6日のニュース