今季最終戦で志願の投手・イチロー ヤ軍で叶わなかった“夢”実現

[ 2015年10月6日 05:30 ]

フィリーズ戦の8回から大リーグ初登板し、1回を2安打1失点で終えたマーリンズのイチロー

ナ・リーグ マーリンズ2-7フィリーズ

(10月4日 フィラデルフィア)
 衝撃の投手デビュー!マーリンズのイチロー外野手(41)が4日(日本時間5日)、今季最終戦となったフィリーズ戦で投手としてマウンドに立った。3回から右翼守備で途中出場し、2打数無安打だったが、2―6の8回から4番手として登板。打者5人に18球を投げて1回を2安打1失点で、最速89マイル(約143キロ)を計測した。念願がかない、マウンドでメジャー15年目を終えたレジェンドに対し、球団側は来季残留を強く希望した。

 背番号51が右翼ではなく、マウンドへ向かうと球場がどよめいた。2―6の8回。「投手イチロー」がコールされた。162試合目のシーズン最終戦。まさかのサプライズが最後に待っていた。

 スリークオーター気味のフォームからの初球は、86マイル(約138キロ)直球でボール。2球目を右翼線二塁打され、その後1点を失ったが、1イニングを打者5人で抑えた。制球重視で、最速は89マイル。「最低でも90マイル(約145キロ)と思っていました。いやぁ、ショックですね」と苦笑したが、18球中11球がストライクと、夢のマウンドを堪能した。

 「二度とピッチャーの悪口は言わないって誓いました。メジャーのマウンドに立つなんて、通常あり得ないこと。思い出としては残しますけど、2回目はいらないです」

 95年、オールスターの試合前のスピードガンコンテストで146キロを計測し、翌96年球宴では打者1人に対し、登板した。しかし、公式戦ではかなわず、ヤンキース時代の昨年7月10日インディアンス戦の8回にも、あと1人打者が出れば右翼から登板するはずだったという。大リーグでは大差の場面で、実績を積んだ野手の願いをかなえて登板させるケースもある。今季は1カ月半前からダン・ジェニングズ監督と打ち合わせてきた。「最終戦で4点ビハインド。僕から声を掛けた」とイチロー。指揮官は「彼ほど実績ある選手なら希望をかなえる資格はある」と志願を受け入れた。

 スライダーで空振りも奪った。4人目ガルビスには2ストライクと追い込むと、鋭く沈む変化球。「スプリットチェンジですね。ベストピッチと思ったけど、なかなか振ってくれないね」と悔しがった。「自分の中では悔しさが残っていた」と真顔で話した。本職のバットは2打席連続空振り三振で、メジャー自己最低の年間91安打、打率・229で終わった。「自分の数字は目を疑うものでした」と話す一方で、「(もっと)できたことはたくさんある」と来季巻き返しへ強い意欲も示した。

 「びっくり箱みたいなチームという印象が1年を通してあった。想像しないことが起きる場所で、最後もそれを示した」。マイク・レドモンド前監督解任からGMの代役就任など、ハプニング続きだった新天地マイアミ1年目を結ぶにふさわしいフィナーレだった。

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