関本 虎一筋19年…万感のフルスイング、甲子園の夜空に3度舞い

[ 2015年10月5日 05:30 ]

<神・広>引退セレモニーを終えナインに胴上げされる関本

セ・リーグ 阪神0―6広島

(10月4日 甲子園)
 野球の神様がくれた、最高のご褒美だった。4万6843人の大観衆が見守った、引退セレモニー。背番号「3」にちなんで3度、阪神・関本が甲子園の夜空に舞った。

 「フォームの確認、狙い球をしぼって打席に入るんですけど、それも吹っ飛んでしまいました」

 万感の思いとともに打席へ向かった。8回2死一塁。大和の代打で登場すると、ねぎらいと惜別の大歓声が全身に降り注いだ。感謝がこみ上げ、涙がにじむ。黒田が投じた6球目の外角カットボールを捉えたかに見えたが、投ゴロに終わった。首脳陣の計らいもあり、9回は予定外に三塁の守備へ。慣れ親しんだポジションからの風景を、しっかりと目に焼き付けた。

 9月8日に1軍復帰を果たして以降、12打数7安打と打ちまくった。現役引退の決断を惜しむ声は多い。ただ、関本自身は人知れず微妙な“変化”を感じ取っていた。

 「技術的な衰えを感じたからこそ、僕は辞めます。投手がリリースして“ストレートや”と分かれば、ヒットにはならないまでもファウルにはしていた。それを空振りするようになってきた」

 8月6日に抹消となった時点で、打率は・133。数字以上にショックだったのは速球への対応力が落ちてきたことだった。ベテランと呼ばれる以上、自身のパフォーマンスに納得できなければ潔く身を引く。それがプロ野球選手・関本賢太郎としての生きざまだった。

 ささやかな願いが、一つだけかなった。公式戦最終打席。これまで一度も聞こえてこなかった虎党の大歓声を、最後に噛みしめることができた。

 「一度で良いから大歓声を聞いてプレーしたかった…。よく聞こえました」

 晩年は代打の神様として愛され、文字通り記憶に残る名プレーヤーに。2905打数807安打、生涯打率・278。満身創痍になりながらも、全力で駆け抜けた19年。「ありがとう」の思いを胸に、甲子園に別れを告げた。 (森田 尚忠)

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