選手の呼び方に見える監督の「考え方」 名前で呼ぶ栗山監督の真意は

[ 2015年10月3日 09:40 ]

試合前に話し込む日本ハム・栗山監督と大谷

 言葉の使い方ひとつで、その人の性格や考え方の一端が垣間見えることがある。それはプロ野球の監督とて同様だ。

 就任1年目ながら独走でリーグ優勝を飾ったソフトバンクの工藤監督。選手と面と向かって会話するときは普通に呼び捨てで話し掛けるが、メディアの前では選手のことを「~選手」「~君」という言い方をする。

 一方、日本ハムの栗山監督は、ほとんどの選手のことを下の名前で呼ぶ。例えば中田なら「翔は日本の4番だから」、大谷のことは「翔平ならできると思っている」など。名字で呼ぶのは宮西ら投手陣の数人だけだ。

 ヤクルトの真中監督や西武の田辺監督らのように、1軍のコーチから監督になった場合は、選手の呼び方にそれほど変化は見られない。だが、工藤監督と栗山監督は評論家からコーチ経験もなく監督に就任した。選手をどのように呼び、どのように接するかは、まず最初に考えたであろう。評論家時代は「選手をリスペクトする」という理由で選手のことを「さん付け」で呼んでいた両監督だが、就任後の選手の呼び方は対照的だ。

 実は両監督とも「言葉」に関する著書を出しており、その中で選手との接し方について触れている。工藤監督は「折れない心を支える言葉」(幻冬舎文庫)の中で「誰かを育てようと思ったら、一緒に失敗してやる覚悟も必要」と書いている。現役時代、捕手の城島を育てるために打たれるのを承知でサイン通りに投げた、という工藤監督らしい言葉だ。

 栗山監督は「伝える。言葉より強い武器はない」(KKベストセラーズ)の中で「僕は意識的に選手と仲良く接することは避けるようにしている。(中略)選手にとっての監督は、それなりに怖さのようなものがあった方がいい」と述べている。親しみを込めて選手を下の名前で呼ぶ姿からは想像し難いが、選手と一線を引く中で考えたコミュニケーション法が、選手の呼び方に表れているように見える。

 日本ハムがCSファーストSを勝ち抜けば、ファイナルSでソフトバンクと対戦する。もし対戦が実現したら、言葉を大事にしている両監督はモメンタムが勝敗の行方を左右する短期決戦において、どのような「言葉」を選手に投げかけるのか。そんな舞台裏にも注目したい。(白鳥 健太郎)

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2015年10月3日のニュース