パ最速V!工藤監督 「クドウ」だから9度胴上げ

[ 2015年9月18日 05:30 ]

<ソ・西>最速だ!最強だ!就任1年目でぶっちぎりのパ・リーグ制覇を成し遂げた工藤監督はナインの手で9度、歓喜の本拠地に舞う

パ・リーグ ソフトバンク5-3西武

(9月17日 ヤフオクD)
独走V2!ソフトバンクは17日、西武を下し、2年連続17度目のリーグ優勝を決めた。監督、コーチ経験がなかった工藤公康監督(52)は就任1年目で優勝。前年日本一のチームを引き継ぎ、選手に競争意識を植え付け戦力の底上げを図り、64年南海、95年オリックスの9月19日より早いパ・リーグ最速優勝を決めた。日本シリーズ進出を争うクライマックスシリーズ(CS)には10月14日に開幕するファイナルステージから出場し、2年連続7度目の日本一を目指す。

 笑顔でその瞬間を迎えた。歓喜の輪が広がったマウンド付近に両手を叩き ながらゆっくり歩を進めていく。工藤監督はリーグ史上最速Vをつかんだ男たちの屈強な手により「クドウ」にちなんで9度、宙を舞った。目に熱いものが浮かんだように見えたが、すぐ笑顔で分からなくなった。

 「最高でした。優勝できて本当にうれしいですけど、心のどこかでホッとしています。僕が苦しむのは大したことではない。選手の努力をグラウンドで見てきた。選手たちのおかげ。本当に頼もしい選手に恵まれた」

 昨年10月、横浜市内の自宅で家族に伝えた。「根本さん、王さん、秋山さん、その先輩たちに俺は育ててもらって、その先輩たちが大切にしてきたチームを大切に預かる気持ちで頑張っていこうと思う」。西武、ダイエーなどの監督、フロントで手腕を振るった故・根本陸夫氏を「おやじ」と呼び、慕った。「一体感があり僕の野球(観)を変えてくれた」という王貞治球団会長らから受けた恩に報いたい。秋山幸二前監督の後任要請を運命だと受け入れた。

 迎えた2月の宮崎キャンプ。選手たちに自ら聞き取りを行って「俺はこんな打順を考えてる」と提案した。「打点を重視したい」と言う昨季4番で重圧を背負った李大浩(イ・デホ)は5番に置き「どの打順も自分はバッティングを変えることはない」と言い切る内川に4番を任せ主将にも指名した。「内川が重圧を背負っているからこそ、前後の打者が楽に打てる」。指揮官の狙いは的中する。ヤフオクドームに新設されたホームランテラスも追い風になり、3番に固定した柳田、内川、李大浩、松田で本塁打は100発を超え、2位・日本ハムに14・5差をつける圧勝劇の原動力となった。

 今季の勝利全てにファンへの恩返しの思いが込められている。99年オフにダイエー(現ソフトバンク)から巨人にフリーエージェント(FA)移籍した際、残留を希望する17万3200人から署名を寄せられた。「マウンドで投げる47の後にいつもあなたの声援があったこと この5年間に感謝を込めてありがとうございます」というメッセージ入りの礼状を妻・雅子さんらにも手伝ってもらい、約7年かけて住所が分かる範囲で送った。「いつかこの福岡で恩返ししたいと思って(監督を)引き受けた。きょう(願いが)かなって、こんな幸せな人間はいません」とほほ笑んだ。

 貯金の数は89年の本拠地福岡移転後最多を更新する47まで膨らみ、尊敬する王、秋山両氏でも成し遂げられなかった就任1年目での優勝を成し遂げた。采配面では打者の調子を「←」など矢印で打撃投手に書いてもらった「工藤ノート」を活用するなど「新人監督」は工夫した。帰宅後はビデオでパ・リーグ全試合チェック。野球に全てをささげた1年だった。

 次は日本一2連覇に挑む。「逃げない気持ち、向かっていく気持ちが大事。ホークスは1年を通してやってこられた。このままで絶対にクライマックスも勝っていけると思う。きっと選手たちはやってくれる。僕は、その力になりたいと思います」。現役時代は西武、ダイエー、巨人の3球団で日本一となった優勝請負人。まずは独走優勝で最初の関門を突破した。今度は監督として最高峰を目指して進む。 (福浦 健太郎)

 ≪プロ野球3番目の早さ≫ソフトバンクがパ・リーグ優勝を決めた。2リーグ制後、9月17日の優勝決定は、90年巨人9月8日、03年阪神9月15日に次いで3番目の早さ。パでは64年南海、95年オリックスの9月19日より2日早い最速Vとなった。また16試合を残して優勝は65年南海の19試合に次ぎ90年巨人と並んで2番目の圧勝劇だった。

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