菅野、涙のお立ち台 1失点完投9勝目「自分にリベンジしたかった」

[ 2015年8月21日 05:30 ]

<巨・神>お立ち台で感極まる菅野

セ・リーグ 巨人2-1阪神

(8月20日 東京D)
 先輩の意地を見せた。夏の甲子園で優勝した東海大相模出身の巨人・菅野智之投手(25)が20日、阪神戦で1失点完投し、今季9勝目をマークした。藤浪との息詰まる投手戦を制し、約1カ月ぶりとなる白星。お立ち台では男泣きして勝利の味をかみしめた。1―1の9回には坂本勇人内野手(26)が左越えサヨナラ打を放ち、チームは首位・阪神戦に3連勝。3・5あったゲーム差を一気に0・5に縮めた。

 藤浪に投げ勝ち、完投で7月24日以来の白星。ヒーローインタビューでは菅野の目から涙があふれた。言葉に詰まりながら思いを口にした。

 「最後まで投げ切ろうと、きょうは強い気持ちでマウンドに上がった。本当にうれしいです」

 日本一に輝いた母校・東海大相模と同じ、攻めの姿勢を貫いた。7回2死三塁。打席に鶴岡、次打者は藤浪。敬遠策もある中で原監督もマウンドへ向かった。「小林とも話してここは絶対に勝負だと思っていた」。148キロの直球で二ゴロに抑え、拳を握り締め吠えた右腕は「試合の分岐点だった」と振り返った。

 前回13日のDeNA戦(東京ドーム)。9回1死二塁で筒香を迎えて敬遠策も計算に入れた中で逆転弾を許した。この日は邪念を振り払って真っ向勝負。「自分にリベンジしたかった。リベンジできた」。チームが苦しむ中で自身も過去2試合は黒星。悔しくて眠れない夜もあった。涙は責任感の強さの証だった。

 試合前には母校の熱闘を目に焼き付け、力に変えた。菅野にとって高校時代は「覚悟」を決めたときだった。2年夏の神奈川大会で初先発し本調子ではなく打線の援護で勝てたが、翌日の新聞に「巨人・原監督のおいっ子」として主役扱いされた。「驚きました。最初は複雑な気持ちもあった。でも、時間がたつにつれて野球をするからにはこういう宿命が待っていると、あらためて思いました」。45年前の優勝監督だった故原貢氏を祖父、原監督を伯父に持つ意味をあらためて理解。甲子園出場はかなわなかったが地道な努力で才能は開花した。昨年はリーグMVPを獲得。今季9勝目で入団から3年連続2桁勝利は目前だ。

 8回1死満塁で亀井に代打・高橋由を送るなど貢氏から受け継いだ攻めの采配を見せた原監督は「引くというのはやってはいけない。(母校の)後輩諸君がいい試合をして我々も相模にあやかった」と何度もうなずいた。負け越せば自力V消滅だった首位・阪神に3連勝し0・5ゲーム差に肉薄。「先輩の意地を見せられて良かった」。菅野がエースの投球を見せつけ、逆転Vのムードは一気に高まった。(川手 達矢)

 ≪防御率1位に再浮上≫菅野(巨)が今季6度目の完投で9勝目。サヨナラ勝ちで勝利投手となるのは昨年4月29日のヤクルト戦以来自身2度目だ。また、この日で149イニングとなり、シーズン規定投球回をクリア。新人の13年からは3年連続だが、巨人で1年目から3年連続規定投球回到達は13年連続の66~78年堀内を筆頭に7人目となった。また、防御率を1.81とし、マイコラス(巨=1.83)を抜き1位に再浮上。昨季も最優秀防御率に輝いており2年連続受賞の期待がかかる。巨人で2年連続防御率1位なら89、90年斎藤雅以来3人目、入団3年目までに2度はチーム初となるがどうか。

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